建築計画を進める際に、表層改良という言葉を聞くことがあるかもしれません。
建築会社の担当者からは「この土地はおそらく表層改良で大丈夫ですね」といった説明を受けますが、表層改良とはそもそもどういったものなのでしょうか。
この記事では、表層改良の特徴と地盤改良が不要となる土地について解説します。
もくじ
表層改良とは
表層改良の特徴や必要性を把握すると、注文住宅にかかる費用の納得度合いが上がります。また、建築会社の担当者から説明される内容を理解できるようになり、より納得のいく家づくりが進められるでしょう。
ここでは表層改良の特徴について解説します。
地盤改良のひとつ
表層改良とは、地盤改良のひとつです。地盤改良とは、建物の安全性を確保するために、土地に人工的な改良を加える工事のことです。
地盤は表面が弱く、深くなるほど強固となっている場合があります。その弱い表面が1m〜2mの場合に表層改良を行います。表層改良によって表面の軟弱地盤を取り除き、セメントを投入し土砂と混ぜることで地盤を固めます。
これにより軟弱だった地盤が安定し、強固な地盤の上に建物を建築することが可能になります。
表層改良の必要性
地盤改良をせずに軟弱地盤の上に建築した場合、地盤沈下による家の傾きや、最悪の場合倒壊のリスクもあります。表層改良はそういった軟弱地盤を改良し、安全に家を建てるために必要な工事です。
また、建築会社としても地盤改良を行わずに家を建築して、万が一家が傾いたり倒壊すると、大問題となってしまいます。そのため、ほとんどの場合は地盤改良費として約100~150万円を見積もりに含め、地盤改良がある前提で建築計画を進めていきます。
表層改良は地盤改良の中でも、比較的安価で工期も短い工法です。契約した土地が表層改良で済む場合、想定していた総予算よりも安くなる可能性があります。
表層改良以外の地盤改良
表層改良は、軟弱地盤が表面から2m以内の際に有効な工法です。軟弱地盤が2mを超える場合は、柱を何本も地中に作る柱上改良が有効となります。
また、軟弱地盤が8mを超える場合は鋼管を打ち込む鋼管杭が用いられるなど、地盤の状況によって選択する工法は大きく変わります。
その中でも表層改良はもっとも小規模な工法となっており、比較的地盤が強固な土地である場合に選択されます。
表層改良 | 柱状改良 | 鋼管杭 | |
---|---|---|---|
工事前の地盤の強さ | ある程度強い | 弱い | かなり弱い |
軟弱地盤の範囲 | 表面から2m以内 | 表面から2~8m | 表面から8m以上 |
表層改良の費用と調査方法
地盤改良が必要なのかどうか、必要な場合はどういった方法が適しているのかなどは、注文住宅の打合せを進める段階でわかります。また、地盤改良の工法によっても費用が大きく変わります。
ここでは地盤改良の調査方法と必要な費用について解説します。
表層改良が必要かどうかは地盤調査でわかる
地盤改良費は多めの予算を確保しますが、地盤改良が必要かどうかは地盤調査を行うことで判明します。土地の売買契約後、建築会社が売主の許可を得て地盤調査を行い、地盤強度を測定します。調査結果によって、地盤改良が必要かどうかが判明します。
地盤調査は一般的に、スウェーデン式サウンディング試験という方法が用いられることが多いです。おもりをつけたロッドを地中に回転させながら埋めていき、回転数やおもりの重量から強度を測定します。費用も約5万円と比較的安く、検査結果もすぐにわかることから、多くの建築会社が採用している調査方法です。
調査の結果、地盤改良が必要となった場合、表層改良、柱状改良、鋼管杭のいずれかを顧客に提示し、実施します。
建築会社の建築事例データでわかるケースもある
大手建築会社は地盤調査を行ったデータを社内で蓄積しています。そのため過去の事例から、土地検討段階で地盤調査が必要かどうか、どの工法が必要なのかがわかるケースもあります。おおまかな地盤改良費をあらかじめ知った状態で土地を検討できるのは、メリットといえるでしょう。
ただし、地盤改良は隣り合う土地であっても必要、不必要が分かれる場合もあります。心配な場合は周辺のデータだけでなく、しっかり調査を受けるとよいでしょう。
地盤改良の費用
表層改良、柱状改良、鋼管杭の必要費用の目安は以下のとおりです。
表層改良 | 柱状改良 | 鋼管杭 | |
---|---|---|---|
費用(万円) | 30~50 | 50~100 | 100~200 |
表層改良は3つの工法で最も安くなり、約30万〜50万円が目安です。柱状改良は50万〜100万円、鋼管杭は100万円を超える場合が多く、表層改良との価格差は大きいです。
建築会社が提示する総予算では、地盤改良費を約100~150万円で予算に組み込むことが多いです。これは、もっとも最も高い鋼管杭を選択した場合でも、大きな予算オーバーとならないようにするための保険となります。だまそうとして高い金額を見積もっているわけではないことを理解しておきましょう。
地盤改良が不要な土地とは
地盤調査の結果、地盤改良が不要と判断される土地もあります。地盤改良が不要であれば、当然地盤改良の工事費用はかかりません。
ここではどういった土地が地盤改良は不要なのか、また、土地探しのポイントについても解説します。
昔から住宅街だった土地
日本には田畑や池、沼を埋めて住宅地にした土地が多くあります。これらの土地は土を別の場所から運び込み、埋め立てて造成を行っています。たとえ造成したとしても、田畑や池であった土地では水分を含んだ土地が多く、軟弱地盤である可能性があります。
一方、昔から住宅地である土地は、地盤が固い可能性が高いです。航空写真などで昔の地形については調べられます。しかし、それだけで判断するのは危険なため、不動産会社にしっかりと確認し、少しでも地盤改良が必要となる可能性があれば、地盤調査を受けましょう。
造成地は地盤改良が必要な場合が多い
造成地とは住宅地ではない田畑などを開発し、道路や上下水道を引き込んだ、いわゆる分譲地のことです。
このような土地は土を一度掘り起こし再度埋め立てている場合が多く、掘り起こすことで地盤強度が下がっているおそれがあります。そのため、通常の土地よりも地盤強度が低いため、地盤改良が必要になります。
造成地は家を建築するために人が作った土地のため、建築イメージがつきやすく、人気の土地です。しかし、地盤改良費は高くなる可能性もあるため、地盤の状況についてはしっかり情報収集して判断しましょう。
山や丘にある土地は地盤が固いが注意が必要
山や丘の上にある土地は岩盤の上に地盤が形成されることが多く、非常に強固な土地である可能性が高いです。ただし地形によっては、土砂崩れや地滑りによって地盤もろとも崩壊するリスクがあります。
特に土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域といったエリアに該当する土地は、注意が必要です。地盤以外から起こる災害にも注意を払いましょう。
地盤改良は必要な前提で土地探しをする
地盤改良工事は、注文住宅などを建てるには、ほとんどの土地で必要となります。できるだけ費用を削減しようと、地盤改良が不要な土地だけを探していては、希望する土地に出会えるまでに多くの期間を要してしまうでしょう。
土地探しは完璧を求めすぎず、妥協できる点を探しながら進めていくとスムーズな家づくりができます。