家を建てると決めたら、土地探しが必要です。土地を選ぶときは、暮らしやすさや周辺の状況などが重要なポイントです。でもその土地、本当に大丈夫ですか?
歴史を調べてみると、もともとは田んぼを埋め立てた地盤のゆるい土地かもしれません。土地の歴史は、地名からわかることがあります。地名は土地の過去を知る手がかりなのです。
もくじ
地名は土地の本当の姿をあらわすサインかも
日本は長い歴史のなかで、多くの災害を経験してきました。毎年のように起こる台風や大雨による水害、地震による災害で多くの人々が被災しています。
昔とは比べられない高い技術で管理しているにもかかわらず、いまでも川が氾濫してしまうのは、もともとの土地の性質に原因があるかもしれません。そういった土地の性質を、地名が教えてくれることがあります。
たとえば、地名に水を連想させる漢字が入っている場合は、水の災害に気をつけるべきでしょう。かつて水田や沼地だった可能性が考えられます。
たとえば東京の池袋も「池」の文字が水を連想させます。かつて池袋は多くの池がある湿地帯で、その池が袋の形をしていたことに由来しています。
同じく東京の渋谷は、いわゆる谷地で流れた水が集まってきます。「渋」は「とどこおる」という意味で、渋谷は文字どおり「とどこおった谷」なのです。渋谷駅の周辺が坂だらけなのもうなずけます。
渋谷も池袋もいまでは再開発などで土地は改良されていますが、もとをたどるとどちらも水に由来する場所なのです。
災害リスクのある危険な地名
水害が起こりやすい土地には、水をあらわす「さんずい」を含む漢字が入っていることが多いです。ほかにも生き物や植物をあらわす漢字も、水害が起こりやすい地名に使われていることが多いといわれています。
また、読み方の響きに意味が込められていることもあります。
水害のおそれのある地名とは?
水とは直接関係なさそうな漢字も、過去の水害や土地の性質をあらわすことがあります。地名に次の漢字が入っている場合は注意しましょう。
地名の漢字 | 地名に使われる漢字の由来 |
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女(オナ) | 過去に津波の被害を受けたことがある可能性がある。荒々しい波を意味する「男波(オナ)」に由来する |
駒(コマ) | 輪状に川に囲まれた土地で洪水が発生しやすい。「転(コロ)」と「間(マ)」を組み合わせた言葉 |
滝(タキ) | 滝は「滾る(たぎる)」。たぎるとは、急流となって逆巻くことや激しく波立つさまをいう。水の激しい流れにより浸食された崖などを示す |
鶴(ツル) | 都留(ツル)と書く地名も多い。鶴の首のように川が湾曲した場所。洪水が起こりやすい土地 |
袋(フクロ) | 水に囲まれた袋状の地形をあらわす。堤防が決壊した際に浸水しやすい土地をいう |
江(エ) | 曲がりくねった川や大地を彫り込んだ地形を指す |
釜(カマ) | 「釜」や「鎌」が湾曲した土地をあらわす。津波や洪水で浸食や崩壊があった場所。水のたまりやすい場所でもある |
衾(フスマ) | 「狭間(ハザマ)」に由来し、低地のため水が流れ込む土地。地下水が多い浸食地のこともある。「伏し」も由来のひとつ |
龍、竜(リュウ) | 水神である龍が暴れたように、過去に激しい豪雨や津波などの災害に襲われたことがある地域 |
土砂崩れのおそれのある地名とは?
次に紹介する漢字は、水害による土砂崩れがあったことをあらわしていることがあります。
地名の漢字 | 地名に使われる漢字の由来 |
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蛇(ジャ) |
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猿(サル) | 「去る」「曝す(サラス)」が由来。崖地など、外気にさらされて崩れやすくなった場所を示す |
柿(カキ) | 柿は「欠く」に由来する。崩れやすい崖の地域であることを示す。また、川などの堤防決壊による氾濫や津波の危険が常にある地域 |
倉(クラ) | 山中の切り立った岩盤や断崖などの非常に崩れやすくなった土地に使われている場合がある |
椿(ツバキ) | 土地が浸食された崖地や崩壊した地形。ツバキはツバケル、凸凹を意味する言葉がなまったもの |
桜(サクラ) | 「裂ける」に通じる。土砂災害の危険性がある。山間部では主に豪雨で崩れやすい土地 |
萩(ハギ) | 「剥ぐ(ハグ)」に由来する。斜面の表面が剥がれ落ち、土砂崩れがあったことを暗示させる |
液状化が起きるおそれのある地名とは?
次に紹介する漢字は、沼地などを埋め立てて作った土地をあらわすことがあります。埋め立て地は、地震によって液状化現象が起こるおそれがあります。
地名の漢字 | 地名に使われる漢字の由来 |
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鮎(アユ) | 軟弱な地盤の土地を意味していることがある。「揺く(アユク)」に由来している。平地では地震災害が発生しやすい土地 |
梅(ウメ) | 埋め立て地の「埋」に由来といわれている。土砂崩れで砂が堆積してできた土地や、埋め立て地を指す |
緑(ミドリ) | 埋め立て地や造成地をあらわすことがある。新しく造られた住宅地などの地名で見かけることもある |
田(タ) | 過去に農耕地だった場所を埋め立てている。ほかに「新田」「野」「原」「稲」などの漢字が使われている場合もある |
窪(クボ) | 低地をあらわす。地盤が弱く、水がたまりやすい。「久保」の漢字が使われている場合もある |
このように災害をイメージさせない漢字が地名に使われていることも多いです。
「●●ヶ丘」「●●台」などのキラキラ地名も注意
東京都目黒区自由が丘は、住みたい街ランキングで上位に入る高級住宅街です。しかしこの「●●ヶ丘」という地名に危険が潜んでいることがあります。
キラキラ地名は新地名の可能性大
「●●ヶ丘」や「●●台」は、新興住宅地につけられていることが多い地名です。新たに土地を造成して街をつくり住宅地が生まれたときに、昔の地名のままではイメージがよくない、ということで新たに「●●ヶ丘」や「●●台」という地名がつけられます。
地名が変わっている場合は、過去の災害などをあらわしていないため注意が必要です。新地名の土地を購入するときは、かつて使われていた地名を調べましょう。
旧地名を調べるには古い地図をチェック
イメージをよくするためにつけたキラキラ地名のほかに、過去の災害のイメージをなくそうと地名を変えてしまったり、平成の大合併によって消えてしまったりした地名は数えきれないほどあります。
消えてしまった地名を調べるには、古い地図を利用するとよいでしょう。古い地図を見るには、次のものが利用できます。
地域の図書館
地域の図書館で閲覧が可能です。郷土資料館や博物館でも資料を保存していることがあります。
国土地理院
国土地理院のサイトでも閲覧できます。また、国土地理院が所有している「地図空中写真閲覧サービス」でいまと昔の航空写真を見ることができます。
古地図のWebサイト
古地図の見られるWebサイトもあります。「今昔マップon the web」は、調べたい地域の新旧の地形図を左右に表示して見比べられます。スマートフォンでの利用も可能です。
災害に関係なくても危険な文字が使われている地名も
東京都千代田区に猿楽町があります。「猿」の漢字があらわす地名は土砂災害の危険がありますが、ここの「猿」は「猿楽」の猿で、災害とは関係がありません。
猿楽とは平安時代に成立した日本の伝統芸能で、能は江戸時代まで猿楽と呼ばれていたそうです。この地に猿楽師の観世太夫(かんぜたゆう)の屋敷があったため、猿楽町と呼ばれています。
危険を示す地名だとしても、すべてが危険とは限りません。古地図で昔の様子を調べてみたら、昔から安全に暮らしていた地域とわかることもあります。土地探しでは、市町村が発行しているハザードマップも活用しましょう。
ハザードマップは、洪水・土砂災害・地形分類などが一度に見られる便利なサイトです。不動産会社でも活用しているので、土地購入を検討する際には参考にしてみましょう。