光熱費の高騰が続く中、冷暖房や給湯など、毎日の生活に欠かせないエネルギーへの支出が家計の大きな負担となっています。毎月の支出を抑えつつ、家族全員が快適に過ごせる住まいを実現するために、住宅の省エネ性能に関心を持つ人が増えてきました。
このような背景の中で注目されているのが、2024年に新しく創設された「GX志向型住宅」です。
「GX志向型住宅」は、ZEH基準を大きく上回る省エネ性能を有する新築住宅を指します。脱炭素志向型の住宅とも呼ばれており、高い断熱性や気密性、再生可能エネルギーの活用でエネルギー消費を大幅に抑えられるのが特徴です。
しかし、GX志向型住宅には厳しい基準が設けられているため、建築コストが高額になりやすいという課題があります。この問題に対する一つの解決策として有効なのが、国や自治体などが実施する補助金制度の活用です。
ここからは、GX志向型住宅の特徴や費用面でのポイント、そして活用できる補助金制度について詳しく見ていきましょう。
もくじ
GX志向型住宅とはどのような住まい?
「GX志向型住宅」とは、優れた断熱性能と高効率の設備を導入し、太陽光発電などの活用で年間のエネルギー消費量をゼロにする住宅です。冷暖房や給湯、照明などで使う電力を太陽光発電などの再生可能エネルギーでまかなうため、長い目で見ると光熱費を大幅に削減できます。
なお、GX志向型住宅は戸建てのみが対象となっており、共同住宅は含まれていません。
推進されている背景
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、カーボンニュートラルを目指す取り組みを住宅建築の分野にも取り入れたものです。国内でも、脱炭素化に向けた具体的な行動を実施することで、課題となっている温室効果ガスの削減を進めていくことが期待されています。このため、政府が認定するGX志向型住宅に住めば、現在展開されているカーボンニュートラルを通じた、脱炭素活動を個人でも支援することが可能です。
ZEH・長期優良住宅との違い
GX志向型住宅と似た制度に、ZEH住宅や長期優良住宅があります。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」となります。
ちょっとややこしいですが、簡単にいうと「電気やガスなどで消費するエネルギーを、太陽光などでつくるエネルギーで補い、年間のエネルギー収支を実質ゼロ以下にする住宅」です。
一方、「長期優良住宅」は、エネルギー消費の観点ではなく長期にわたり住宅を良好な状態で使用するための対策が実施された住宅です。
長期優良住宅の建築及び維持保全の計画を作成し、所管行政庁に申請すると認定を受けられます。その基準には、耐震基準などに加えて、断熱性能についても基準があります。国交省では、長期にわたって良好な状態で住める住宅を「長期優良住宅」として認定しています。
断熱性能の基準が高い
「GX志向型住宅」を長期優良住宅・ZEH住宅と比較した時の大きな違いは、断熱性能です。
省エネ性能の基準 | GX志向型住宅 | ZEH/ 長期優良住宅 |
---|---|---|
断熱性能 | 断熱等性能等級「6以上」 | 断熱等性能等級「5以上」 |
BEI(一次エネルギー消費量) | BEI:0.65以下 | BEI:0.8以下 |
断熱等級は、数字が大きいほど断熱性能も高くなり、ZEHと長期優良住宅では断熱等級5以上になっていますが、GX志向型住宅では断熱等級6以上であることが条件です。
一次エネルギー消費量にも高い基準が求められる
GX志向型住宅では「BEI(一次エネルギー消費量)」もZEH・長期優良住宅と比べて高い基準が設けられています。BEIは、建物が使用する一次エネルギー(電気やガスなど)の消費量がどのくらい削減されているかを示す指標のことで、数値が小さいほど省エネ性能が高いといえます。
例えば、ZEHや長期優良住宅はBEIが0.8以下であるのに対し、GX志向型住宅では0.65以下です。厳しい基準が定められているため、結果としてGX志向型住宅のほうが冷暖房や給湯などにかかるエネルギーをより少なく抑えやすく、日々の光熱費削減につながります。
GX志向型住宅に求められる基準
GX志向型住宅は、かなり厳しい基準をすべて満たす必要があります。具体的には、以下の3つの性能基準をクリアしなければなりません。
- 断熱等性能等級「6以上」
- 再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率「35%以上」
- 再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」
断熱等性能等級は1から7までの7段階あり、GX志向型住宅の基準は上から2番目となる「6以上」です。
さらに、住宅で消費するエネルギーを太陽光パネルなどの再生可能エネルギーでまかない、実質ゼロ以下に抑えることが目標となります。これらの基準はどれも水準が高く、なかでも年間エネルギー削減率「100%以上」は特にハードルが高いため、設計・施工段階でしっかりと検討することが大切です。
これからは、それぞれの基準について詳しく説明していきますので、GX志向型住宅を検討する際に役立ててみてください。
断熱性能等級6以上
GX志向型住宅では、断熱性能等級が6以上であることが求められます。
従来、断熱性能等級は「等級1(無断熱)~等級4」に区分されていましたが、改正建築物省エネ法の成立によって、「新たに等級4〜等級7」が設定されています。数値が大きいほど断熱性能が高いとされており、たとえば等級4は等級1と比較すると、計算上は約60%の省エネが達成されています。
住宅の断熱性能を評価するために使われる指標として、「UA値(外皮平均熱貫流率)」と「ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)」という2つがあります。UA値は壁や屋根など外側の構造からどれくらい熱が移動するかを示し、ηAC値は夏場に窓から入ってくる日射熱の量を示します。
2つの指標は外壁や窓などの面積と性能をもとに計算され、数値が小さいほど外気の影響を受けにくく、冷暖房エネルギーを抑えやすい高断熱な住宅といえます。
- UA値:床、外壁、屋根や窓などから外へ逃げる熱量を示した指標。値が小さいほど熱が逃げにくく、暖房エネルギーが削減される。
- AC値:冷房期に窓などから侵入する日射の熱量を評価した指標。値が小さいほど熱が入りにくく、冷房エネルギーが削減される。
このUA値にηAC値をかけたものを使用して、住宅の品質確保の促進等に関する法律において、それを分類したものが「断熱等性能等級」となります。なお、GX志向型住宅が該当する、断熱等性能等級「6・7」は、2022年に新設された水準のことを指します。具体的には、UA値とUA値の計算値は下記のようになります(地域区分6:東京等の場合)。
断熱性能等級 | UA値 | ηAC値 |
---|---|---|
等級6 | 0.46 | 2.8 |
等級7 | 0.26 | 2.8 |
基準一次エネルギー消費量を35%以上削減
断熱性能等級以外にも「基準一次エネルギー消費量」といわれる基準が、GX志向型住宅には設定されています。
住宅設備などに使用される再生可能エネルギーを除いた、「一次エネルギー消費量の削減率について35%以上であること」が定められています。
この基準は太陽光発電等を含まない場合でも、住宅全体でエネルギー消費を抑える目標です。
「一次エネルギー消費量」とは、「住宅で使われている設備機器のエネルギー」を熱量に換算したもので、冷暖房に加えて、換気、給湯、照明などを含めたものの合計、つまり「住宅内で消費されるエネルギー」の総量をあらわします。
太陽光パネルなどによる再生可能エネルギーでは、熱量を消費していますが、同時に生産もしているので、その場合は、消費分から生産分を差し引いて計算に加えることになっています。
なお一次エネルギー消費量にも等級が定められており、「設計一次エネルギー消費量」を「基準一次エネルギー消費量」で割って求める「BEI数値」で決められています。
基準となる等級4では、BEI=1.0となっており、設計段階のエネルギー消費量と基準消費量が等しいことが求められています。2段階上の等級6はBEI=0.65で、等級6に適合するためには、「等級4より一次エネルギー消費量を35%以上減らす」ことが必要です。
再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量を100%以上削減
またGX志向型住宅では、「再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率が100%」と定められています。
この場合、先ほどと違う数値となっているのは、再生可能エネルギーを含むためです。すなわち、再生可能エネルギーを使用した全体でのエネルギー収支ということになります。
例えば、GX志向型住宅でも太陽光発電等の設置などが求められており、これによってエネルギーの自給自足が一般住宅でも実現することになるのです。またエネルギー自給自足以外にも、光熱費の節約につながるほか、万が一での災害時のエネルギー源確保といったメリットも得られます。まさに、これからの将来の日本の住宅に必要とされる基準ともいえます。
なお本基準は、「寒冷地等に限っては、75%以上も可」、「都市部狭小地等の場合に限っては再生可能エネルギー未導入でも可」と、一部の条件が緩和されています。これは、日照条件が良くないケースを考慮していることなどが理由です。
以上の住宅基準をまとめると、建築物の断熱性能と平均日射熱取得率、および一次エネルギー消費量で決まっており、これにより異なる等級が設定されることになっています。
GX志向型住宅では、一次エネルギー削減のために、省エネ給湯器や高断熱窓といった設備の導入が求められています。一次エネルギー消費量削減の取組みをまとめると、住宅に設置されている、暖房や照明、給湯などを含めて、目標値である等級6と5を達成することとなり、住宅本体以外の省エネ設備からの貢献が大きいことがわかります。
GX志向型住宅を対象とした補助金制度
GX志向型住宅の基準を満たした住宅を新築・改修する場合、国や自治体から補助金を受けられることがあります。
国がGX志向型住宅の普及に力を入れている背景としては、脱炭素社会の実現を早めることが大きな目的です。高い省エネ性能と再生可能エネルギーの活用を推進することで、二酸化炭素の排出を抑え、環境への負担を軽減しようとしています。
こうした政策の一環として、GX志向型住宅を新築・改修する場合に受けられる補助制度が充実してきています。実際に計画される際は、最新の補助金情報をチェックしておくと費用面での負担を減らすことが期待できます。
子育てグリーン住宅支援事業
GX志向型住宅などのあたらしい基準に合致した住宅を対象として、子育てグリーン住宅支援事業が、2025年度の政府取組みとして実施される予定です。
省エネ性能に優れた住宅の普及を促進するため、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象とした高水準の省エネ住宅の新築を支援する取組みとなっています。子育てエコホーム支援事業から継続されており、国交省、経産省と環境省との間における共同での取組みとして実施される予定です。基本的には前年度と同内容ですが、2025年度からはGX志向型住宅への補助金が新設されているのが特徴となっています。
GX志向型住宅には、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、子育て世帯などを含むすべての世帯について、最大最大160万円/戸の補助金支給が2025年度にも継続される見込みです。見込みとなっているのは、現在まだ25年度予算案が国会で承認されていないためです。
長期優良住宅への補助金
GX志向型住宅以外にも、カーボンニュートラル関連の補助金制度があり、長期優良住宅への補助金もそのひとつです。
長期優良住宅では、新築時に最大80万円/戸で、建て替え時にはさらに20万円の加算があります。なお該当住宅の基準性能としては、断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費量削減率は20%以上となっています。
ZEH水準住宅への補助金
GX志向型住宅以外にも、ZEH水準住宅への補助金も実施される予定です。
ZEH水準住宅では、新築時に最大40万円/戸で、建て替え時にはさらに20万円の加算があります。なお該当住宅の基準性能としては、断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費量削減率は20%以上となっています。
補助金や優遇制度を受けられる
GX志向型住宅では、上記のような補助金やそれ以外にもいろいろな優遇制度が受けられます。
GX志向型住宅自体の補助金に加えて、特に「住宅用蓄電池の導入コスト」の最大3分の1まで、費用の補助が受けられます。また住宅ローンや固定資産税なども、長期優良住宅などと同等に、一部が軽減対象となっています。
「家づくりプラン」で理想のマイホームを実現しよう
現在、GX志向型住宅の建築基準は決まっていても、実際に施行するときの細かい仕様は決まっていません。特に、住宅に設置する設備機器のメーカーや型番などは規定されておらず、ハウスメーカーによっても提案が異なることがあります。
このためGX志向型住宅を建てる場合は、各社から建築見積もりを依頼し、比較して検討するようにしましょう。
もし家づくりプランを比較したい場合は、「メタ住宅展示場」ホームページから参照してみてはいかがでしょうか(下記引用先よりご覧いただけます)。
「メタ住宅展示場」では、展示場に足を運ぶことなく、複数社からの資金計画や間取りプランの提案が受けられます。簡単な入力フォームを送信するだけなので、忙しい人でも手軽にプラン請求が可能となっています。多数の会社が登録しているので、一括請求で時間をかけずに多くの建築会社から提案が受けられます。
各社の提案を見比べることで、GX志向型住宅など家づくりの知識も充実します。理想の家づくりの実現のために是非、一度ご検討ください。