勝手口の必要性は「ある」「ない」で意見が分かれる問題です。勝手口がなくて後悔した人もいれば、「いらなかった」と勝手口をつけて後悔した人もいます。
本記事では、新築の一戸建て住宅に勝手口をつけるべきか徹底検証します。勝手口をつけるかどうかで迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
勝手口=台所の出入り口は法律上必要なし
勝手口とは、玄関とは別に設けられた出入り口のことです。昔は台所を「お勝手」と呼んでいたため、台所にある出入り口という意味で「勝手口」と名前がつきました。
ところで、勝手口は法律上必要なのでしょうか。建築基準法などの法規に勝手口が必要という明記はありません。たとえば、共同住宅などの避難通路として必要な出入り口に、勝手口と称して兼用している建物はあるかもしれません。
しかし、個人住宅では勝手口を設置する義務はありません。
住宅に勝手口があって「よかった」理由
勝手口をつける義務はないことがわかりました。しかし、昔ながらの家には勝手口がついているのが一般的です。
この項では、すでに一戸建て住宅を建てた人が住宅に勝手口があって「よかった」と感じた理由を解説します。
ゴミ置き場やゴミ出しに便利
ほとんどの勝手口が台所に設けられているため、勝手口があるとゴミ出しがしやすいです。
台所に大きなゴミ箱を設置している家は多く、勝手口があれば、料理などで出たゴミをそのままゴミ捨て場まで運べます。台所から直接外に出られるので、大きなゴミを持ってリビングや廊下を通る必要もありません。
ゴミ捨ては頻度も多く、週に3回程度は必要なため、ゴミ捨てが楽になることで家事の負担を減らせます。
また、台所で出たゴミを外に出して保管しておくこともできます。家の中にゴミを置いておきたくない場合や、ペットボトルや空き缶が大量に出てかさばる場合は、ゴミ収集日まで外に置いておけば解決するでしょう。
生活動線が増える
ゴミ出し以外でも、勝手口があれば生活動線を増やせて便利です。たとえば、道路に面した玄関や、駐車場など、普段から出入りの多い場所に勝手口が設置されているとしましょう。この場合、勝手口から台所に入れば、すぐに買い物で買った食材を冷蔵庫にしまえます。
また、駐車場と勝手口の距離が近ければ、車から降りて玄関に向かうよりも直接勝手口から台所に向かうほうが効率的です。車で買い物に行くときはお米やお醤油など重いものを買うことも多く、直接台所に行けると助かる人は多いでしょう。
ゴミ出しや買い物だけでなく、家の中の用事でも勝手口は役立ちます。たとえば、家庭菜園を楽しんでいる場合、勝手口から庭やベランダに行くことも可能です。土などでリビングや廊下を汚す心配もありません。
また、勝手口と洗濯物を干す場所が近い場合も、洗濯物を持って勝手口からすぐに外に出られます。そのため、家の中を行ったり来たりする必要がなくなり、家事の時短につながります。特に台所と洗濯機が近いと、家の中を歩き回る必要もなくなります。
水に濡れた洗濯物は意外と重いので、洗濯物をすぐに干せると肩や腰などにかかる負担も減らせるでしょう。
採光と通風に適している
勝手口は出入り口としてのメリットだけではなく、台所やリビング全体を明るくしたり、換気したりできるメリットもあります。
台所は北側にあったり、リビングの奥に配置されたりすることが多いです。そのため、冬場は昼でも暗くて調理しにくい場合があり、コンロのうえにある電気をつける人が多いです。
しかし、勝手口があれば窓のない台所でも自然光が入り、電気をつけなくても部屋全体が明るく暖かくなります。
また、勝手口はさまざまな形状があり、窓に網戸が付いていて鍵を閉めたまま換気ができるタイプもあります。風を通すことによって気温が上がり過ぎるのを防ぎ、季節によってはエアコンも不要となるでしょう。
料理中だけではなく、掃除や模様替えの際に勝手口から換気ができると快適に作業できます。
住宅に勝手口があって「後悔した」理由
一方で、最近の家には勝手口が少なくなっているように感じます。一戸建て住宅を建てた人が住宅に勝手口があって「後悔した」理由を解説します。
防犯対策が必要になる
一般的に勝手口は道路から見えにくい場所など、外からの視線が少ない場所に設けられます。そのうえ、勝手口の鍵は玄関に比べ簡易的なものが多いです。そのため、泥棒などの空き巣に狙われやすい場所です。
空き巣に狙われにくくするには、勝手口に防犯対策を施す必要があります。たとえば、防犯性の高い鍵を付けたり、防犯カメラを設置したりするのが一般的です。また、最近では人が通ると明るくなる人感センサー付き照明も人気ですので、検討するとよいでしょう。
また、防犯性の高い勝手口用の扉は、「勝手口は必要だけど防犯面が心配」な人におすすめです。ただし、いずれも数万~数十万円程のコストがかかります。
なお、勝手口には内鍵だけのタイプと、内鍵と外鍵の両方があるタイプがあります。一般的には、防犯対策を考えると内鍵だけのほうが外からの侵入を防げるため安心とされています。ただし、内鍵だけでは鍵を失くした場合や窓を割るなど不正な手段で開けられた場合には、安全性を確保できなくなります。
一方で、外鍵があれば外から帰ってきたときに直接勝手口から家に入れます。あとから外鍵をつけるときはドアを丸ごと交換しなくても一部の交換で可能な場合もありますが、どちらにせよ費用がかかります。
勝手口に対する防犯対策はコストがかかりますが、何かあったときには遅すぎることがありますので、早めの対策を検討しましょう。
外構費用がかかる
勝手口を設ける場合は、想定以上に費用がかかるおそれがあります。壁である部分にドアをつけることになるので、新設の場合は約20〜50万円かかります。
勝手口を設ける場合と代わりに窓をつける場合を比較すると、10万円前後の価格差になるでしょう。さらに、勝手口をつけるなら、場所によっては外に出るための足場も必要になるので外構費用もかかります。
スムーズに外に出るためや、靴を置くための土間を作れば費用もかかりますし、勝手口のうえに雨よけの庇を作る場合もプラス5万円前後かかります。
また、勝手口が外から見えやすい場所にある場合、それなりにデザインや外観にも気を配ることになるでしょう。勝手口を作ると、防犯対策と外構費用である程度のお金が必要になるといえます。
寒くなりやすい
勝手口をつけるメリットで採光と通風について解説しました。しかし、勝手口があるということは、家の開口部が多いということです。
開口部が多いと、どうしても室内の断熱性・機密性が低下してしまいます。晴れの日は光が差し込みますが、風の強い日や夜は隙間風が気になるかもしれません。
間取りやドアの開閉頻度にもよりますが、出入りが多ければエアコンの効きが低下して光熱費がかかってしまうおそれもあります。特に北側に台所がある間取りや寒い地域では、注意が必要です。
壁のままよりは断熱性は下がりますが、最近は断熱性能が高いドアも流通しています。「勝手口は必要だけど、寒いのは避けたい」という人は予算と相談して検討するとよいでしょう。
勝手口をつけるかどうかの判断ポイント
勝手口にはメリットとデメリットがあることがわかりました。どちらの理由も納得できるので、悩んでいる人も多いでしょう。
最後に、勝手口をつけるかどうか判断するためのポイントを説明します。
勝手口が必要な間取りかどうか
勝手口が必要な間取りを挙げてみましょう。
- 玄関と台所が離れた位置にある
- 駐車場と勝手口が近い
- リビングを一度通らないとゴミ捨てができない
- 勝手口から洗濯物を干す場所にすぐ出られる
- 勝手口から家庭菜園をしている場所にすぐ出られる
上記は一例ですが、大切なポイントは「勝手口があると生活が便利になるかどうか」です。そのために、家の間取りを考えてみましょう。
たとえば、「玄関と台所が離れた位置にある」「駐車場と勝手口が近い」間取りでは、買い物から帰って勝手口から入ったほうが便利です。
「リビングを一度通らないとゴミ捨てができない」間取りでは、家族がくつろいでいる時間や来客中にゴミを持ってリビングに行きたくない人もいるでしょう。
勝手口をつけるか迷ったら、勝手口があったほうがよい間取りかどうか、よく考えてみるのがおすすめです。
勝手口が必要な生活スタイルかどうか
勝手口が必要な生活スタイルとは、以下のような場合を指します。
- ペットボトルや缶のゴミがよく出る
- 来客が多い
- 犬を飼っている
- 洗濯物は必ず外に干す
- 共働きで玄関の鍵を子どもに持たせたくない
ペットボトルや缶のゴミがよく出る
ペットボトルや缶の消費量が多い家庭では、定期的にゴミを出す日が来るまでに家の中でゴミがかさばってしまいます。しかし、勝手口の外にゴミ箱を置いておけば、外にゴミを捨てられます。
そのため、ゴミ回収日が来るまで家の中をすっきりと保てます。
来客が多い
勝手口があれば、お客様がいるリビングを通らずに家の外に出入りできるため、プライバシーが守られます。荷物の出し入れなどもスムーズにできるでしょう。
犬を飼っている
犬の散歩のあとに勝手口を使えば、玄関をきれいなまま保てるでしょう。さらに、勝手口を出たところに水道があれば、犬の足を洗ったり水を飲ませたりもできて便利です。
洗濯物は必ず外に干す
勝手口から庭やバルコニーに出て洗濯物を干せます。この場合、家の中を通らずにそのまま外で洗濯物を干せるため、家事の効率がアップします。
共働きで子どもに玄関の鍵を持たせたくない
子どもの帰宅時に家を空けることが多い場合でも、外鍵がついているタイプの勝手口があれば、子どもに勝手口の鍵を持たせられます。
子どもは玄関からではなく勝手口から入れるので、玄関の鍵を持たせる必要はなくなります。ただし、生活スタイルや習慣は家庭によって異なるため、1日を振り返って勝手口の必要性を考えてみましょう。
使い勝手がよいかどうか
勝手口をつけるにあたって、使い勝手のよさは大切です。最後に、使いやすい勝手口にするためのふたつのポイント「土間」「庇」を説明します。
勝手口を作るなら土間のあるタイプがよいでしょう。土間がないと、勝手口の外で靴を脱ぐ必要があるからです。さらに、土間がない場合は家の中から外に出るときに靴やスリッパが必要なため、外に靴が置きっぱなしになることが多々あります。そうすると勝手口を使わなくなっていくため、土間を作ったほうがよいでしょう。
また、庇があれば雨や日差しを防げます。家とドアの境目から入り込む雨水の侵入を防止できれば、建物が傷んだり汚れたりするのを防ぐことにつながります。
とはいえ、土間と庇を作るには予算が必要です。勝手口をつけるなら使いやすいほうがよいですが、その予算が無理なく算出できるかも検討してみましょう。