夢のマイホームを手に入れるために、低価格で建てられるローコスト注文住宅が注目を集めています。ローコスト注文住宅は、設備や間取りが規格化されていることが多い一方で、コストを抑えつつも、いちから家づくりを進められる魅力があります。
ローコスト注文住宅の定義をはじめ、利点と欠点、ローコストにして後悔しないためのハウスメーカーの選び方6選を解説します。
ローコスト注文住宅とは?費用相場
ローコスト注文住宅に明確な定義はありませんが、一般的に本体価格が1,000万円台、坪単価60万円以下が目安と言われています。
実際に、大手ローコストハウスメーカーの費用相場を見てみましょう。住宅金融支援機構の「2021年度フラット35利用者調査」によると、注文住宅を建てた人の平均住宅面積は、約37坪でした。
ローコスト注文住宅で37坪の家を建てる場合に、必要な建築費用の目安は次のとおりです。
ハウスメーカー名 | 坪単価の目安(万円) | 37坪の家の建築費用(万円) |
---|---|---|
タマホーム | 34~55 | 1,258~2,035 |
アイフルホーム | 40~50 | 1,480~1,850 |
ユニバーサルホーム | 45~70 | 1,665~2,590 |
レオハウス | 40~60 | 1,480~2,220 |
アキュラホーム | 40~75 | 1,480~2,775 |
※実際には、家本体の建築費用のほかに付帯工事費や外構工事費、諸費用、土地取得費などもかかります
表からわかるように、ローコスト住宅では1,000万円台で注文住宅が建てられます。「2021年度フラット35利用者調査」では、注文住宅にかかった資金の全国平均は、3,572万円だったと報告されています。
家本体の建築費用は、一般的に総費用の約7割を占めることから、家本体の建築費用の平均は約2,500万円です。
1,000万円台で注文住宅が建てられるのは、リーズナブルといえるでしょう。
ローコスト注文住宅はなぜ安いのか?
ローコストハウスメーカーが低価格を維持できるのは、各ハウスメーカーが販売価格を抑える工夫をしているからです。
具体的な施策はそれぞれの会社で異なりますが、基本的な理由は次のとおりです。
- 材料を大量に仕入れて単価を下げる
- 工場で部材のプレカットをする
- テレビCMなどの広告を縮小する
- 家の形状や間取りをシンプルにする
- 現場の作業効率を上げる
プランや間取りを規格化することで、資材や建具などを一括で大量に仕入れて単価を下げるのは、多くのローコストハウスメーカーで行われている施策です。
人件費は、工場の機械で資材のプレカットをして現場での工程を減らしたり、家の形状や間取りをシンプルにしたりして、工期を短縮することで抑えられています。
また、独自の物流システムを構築して、物流コストを抑える会社もあります。テレビCMをローカル放送にしたり、インターネット広告やSNSを中心にしたりして、広告費を削減する会社も少なくありません。
ローコスト住宅の魅力(メリット)
ローコスト住宅の魅力(メリット)は次のとおりです。
- 標準仕様の場合、購入費用を抑えられる
- スピーディーに建てられる(=仮住まいの費用削減ができ、転勤・転校時期に合わせやすい)
- こだわりたい部分は、カスタマイズできる
標準仕様の場合、購入費用を抑えられる
ローコスト住宅のメリットといえば、住宅の購入費用を抑えられることです。
ローコスト住宅のハウスメーカーは、大量に材料を仕入れて、ある程度のレベルでオートメーション化を採り入れているため、職人の技術力によって完成度が左右されにくいです。
材料を一度に大量に仕入れ、工場で部材を規格化することや、宣伝広告費を抑えることでコストダウンを実現しています。そのため、顧客にとっては購入しやすい価格になっています。
また、ローコスト住宅は注文住宅などと比べて部屋数を減らし、水回り備品のグレードを抑えるなど、さまざまな対処をしてコストを減らす工夫をしています
ローン返済にしても通常の注文住宅よりも安価なため、月々の返済を減らせる可能性が高いです。
スピーディーに建てられる(=仮住まいの費用削減ができ、転勤・転校時期に合わせやすい)
ローコスト住宅は、建築期間が短いこともメリットです。
一般的な注文住宅を建てる場合の工期は約4カ月から6カ月ですが、ローコスト住宅は約2カ月から3カ月といわれています。
ローコスト住宅の工期が短い理由は、現場作業の省略化です。材料をあらかじめカットしてから現場で組み立てるなどで、スピーディーな作業工程にしています。
入居までの期間が短くなった結果、「仮住まいにかかる家賃を抑えられる」「子どもの転校や進学に合わせやすい」などのメリットがあります。
こだわりたい部分は、カスタマイズできる
ローコスト住宅は、価格を抑えるために標準仕様として一般的な注文住宅よりもグレードを下げた設備を使っています。設備のグレードはオプションで変更できるため、キッチンなどの水回りや、内装、壁紙などに費用をかけてカスタマイズが可能です。
コストをかける部分とそうでない部分を自分で決めて、オリジナリティのある家がつくれます。
ローコスト住宅のデメリット
ローコスト住宅のデメリットは次のとおりです。
- こだわりすぎると、予算オーバーになる
- 長期的に見ると割高になる
- 設計の自由度が低くなる
- 性能や耐久性が低い危険性がある
こだわりすぎると、予算オーバーになる
ローコスト住宅に住んだ人の声として多いのが、標準仕様以外のオプション追加やカスタマイズにかかる費用です。
オプションの追加やカスタマイズをしすぎた結果、予算オーバーになってしまうことがあります。せっかくローコスト住宅を建てているのに、設備面で予算をオーバーしてしまうのは考えものです。
標準仕様はハウスメーカーごとに異なるため、他社の仕様をよく比較して検討しましょう。
長期的に見ると割高になる
ローコスト住宅の住宅設備や建材は、できるだけ安い価格でおさまるものを使用しています。そのため、設備の劣化が早く、通常の住宅に比べてメンテナンスの頻度が高い傾向があります。
たとえば、ローコスト住宅の外壁に使用されることの多い「
シーリングといわれるつなぎ目の打ち替えが7年から10年おきに必要となるなど、メンテナンスなどの費用を含めてトータルコストを考えることが重要です。
たとえローコスト住宅の購入費用を抑えても、メンテナンス面をプラスしたトータル費用が高ければ長期的に見て割高になるおそれがあります。
設計の自由度が低くなる
ローコスト住宅はデザインがシンプルで、こだわりの内装や間取りといった期待値は低くなるおそれがあります。
実際に住む段階になり、「家具などを運び入れたときに部屋の狭さを実感した」「リビングの開放感があまり感じられない」などの不満が出ることもあるでしょう。
ローコスト住宅で後悔しないためには、あらかじめ自分が欲しい理想の住宅を明確にしておくことです。
標準仕様の設備を確認し、場合によってはセミオーダー形式でデザインや間取りなどを決められる規格住宅※なども視野に入れてみてもよいでしょう。
- ※規格住宅
- 一定の提示プランから間取りや、設備、仕様などをセレクトして建てる住宅
性能や耐久性が低い危険性がある
ローコスト住宅ならではですが、やはり一般的な住宅と比べれば素材の耐久性や住宅性能は劣ると考えてよいでしょう。代表的なものとして、窓の断熱性能が低いことによる寒さや結露の問題、また災害の耐久性などが挙げられます。
対策としては、ハウスメーカーごとのローコスト住宅のアピールポイントを比較し、どのポイントを重視するか熟考することです。そうすることで、満足できる家を購入できるでしょう。
後悔しないためのハウスメーカーの選び方6選
では、実際にローコスト注文住宅を建てるとき、どのようなポイントに注意したらよいのでしょうか。
後悔しないためのハウスメーカーの選び方について、解説します。
- 住宅性能や保証内容を十分に吟味する
- 担当者との相性を確認する
- 失敗例やデメリットを把握する
- 選択肢の範囲・オプション料金を確認する
- 複数社に見積もりを依頼する
- 大手から中小まで、複数の住宅展示場から吟味する
住宅性能や保証内容を十分に吟味する
コストを抑えるために、住宅性能や保証内容について妥協するのはおすすめしません。
家の間取りやデザインは大切な要素ですが、耐震性や耐火性といった災害に対する強さは、家族の命や暮らしを守るために重要なポイントです。同時に断熱性や気密性も夏の暑さ、冬の寒さを軽減し、快適に過ごすためには不可欠です。妥協すると、家での生活が心身ともにストレスになるおそれがあります。
また、ローコスト注文住宅では、引き渡し後の保証が短期間である場合があります。保証期間の延長ができたり、無料点検などのアフターサービスが充実していたりすると、安心でしょう。
住宅性能や保証内容は妥協せず、十分に検討して選びましょう。
担当者との相性を確認する
満足したマイホームを建てるには、営業担当者や設計担当者との相性が大きなポイントです。
家づくりは間取りや設備、素材など、選択の連続です。担当者の知識やアイディアが豊富で、意思疎通がしやすいと、家づくりの打ち合わせがスムーズに進められます。
実際にコミュニケーションを取ってみて、相性を確かめておくのがよいでしょう。
失敗例やデメリットを把握する
後悔のない家づくりをするには、すでに家を建てた人の失敗例を参考にすることも大切です。
どのような点で失敗や後悔をしたのか、家を建てた経験のある人に聞いたりインターネットなどで調べたりしてみましょう。ローコスト注文住宅のデメリットについても十分に把握しておくことが、理想の家づくりへの近道です。
選択肢の範囲・オプション料金を確認する
すべてのハウスメーカーに、「できること」と「できないこと」があります。選択肢の幅はどのくらいあるのか、オプション料金はどの程度か、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
ローコスト注文住宅の中には、標準プランを安く提供している分、オプション料金の設定が高い場合もあります。
また、プランは安いのにオプションをつけていくうちに総費用がふくれあがってしまう場合もあります。本当に必要なオプションなのか、慎重に選びましょう。
複数社に見積もりを依頼する
ハウスメーカーを選ぶときは、はじめから1社に決めるより、複数社に見積もりを作成してもらい比較しましょう。
坪単価の近いローコストハウスメーカーでも、用意しているプランや設備、サービス内容は異なります。価格だけでなく、プランの内容や住宅性能など、トータルで比較して決めるのがおすすめです。
大手から中小まで、複数の住宅展示場から吟味する
ハウスメーカーによって、価格や品質、サービス、デザインなどが大きく異なります。
自分に合ったハウスメーカーを見つける方法のひとつは、メタ住宅展示場でVR内覧することです。インターネット上からアクセスするだけで、メーカーや中小工務店の展示を見学できます。
ぜひ、全国のモデルハウスを見学し、各社の特徴や提案力を比較検討してください。また、気に入った展示があれば、無料で間取りプランや見積もりを取り寄せることも可能です。
自分の予算や希望に合わせて、幅広く検討してみましょう。