フラット屋根とは、傾斜のない平らな屋根のことで、陸屋根(りくやね)ともいいます。近年フラット屋根を選択する人が増えています。
この記事では、フラット屋根のメリットやデメリットを徹底解説します。フラット屋根を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
なぜフラット屋根が増えている?
シャープなデザインのフラット屋根は、一昔前まで、あまり採用されていませんでした。
ではなぜ、近年フラット屋根が増えてきているのでしょうか。
鉄骨系住宅の増加
一昔前の一般的な住宅の構造は木造がメインでした。
木造住宅の場合、屋根に勾配をつけないといけないというルールがあります。
屋根については、複雑な平面形状とすると、各所に谷部が形成されるため、降雨強度が強い場合等の漏水の危険性が増し、また、勾配が不足する場合には、屋根の葺き材の裏面からの雨水の回り込みや、雨水の流速が落ちること等による漏水のおそれもある。このため、可能な限り単純な形状となるように配慮するとともに、葺き材別に適正な勾配の下限値や、製造者が公表している推奨値を参考に適正な勾配を確保する。
木造計画・設計基準の資料 – 国土交通省
そのため、木造住宅の屋根は勾配をつけた屋根=三角形の屋根が主流でした。そのためフラット屋根はマンションやビル、工場などの大規模建築物に採用されていました。
しかし近年は、木造系以外の鉄骨やコンクリート造住宅が台頭してきました。これらの構造には、勾配をつけるという制限はなく、フラットな屋根を実現できます。
シャープでスッキリとしたデザインが人気
住宅を購入するメインターゲットは30代〜40代といわれています。このターゲット層には、シャープでモダンな外観の住宅が人気です。
フラット屋根にすることで、キューブ型といわれる四角形の外観も可能です。普通の家の外観と一味違う、おしゃれな雰囲気にしたい方が増えていることもフラット屋根が人気の理由のひとつです。
多様化するライフスタイルに合わせられる
特に土地が高く面積が小さい都内では、限られたスペースに居住空間をつくる必要があります。
屋根をフラットにすることで、ルーフバルコニーとして活用できます。都内で建築を検討している方は、屋上空間も居住空間のひとつとして捉えます。そのため、少しでも居住空間を広げたい方にとって、フラット屋根は魅力的です。
また、景色を一望できる屋上はアウトドアリビングとしてもフル活用できます。
屋上庭園で自然を感じたり、小さなお子様がいる場合はプールで遊べたりと、いろいろな使い方で楽しめる屋上は大きな魅力です。
このように屋上を活用することで、多様化するライフスタイルのニーズを満たせます。
こんなにも多い!フラット屋根のメリットとは
フラット屋根には多くのメリットがあります。メリットを生かすことで理想のマイホームに近づくかもしれません。
風害に強い
フラット屋根の場合、庇(ひさし)のように外壁から出ていることがないので、強風による被害を最小限に抑えられます。特に日本では毎年多くの台風が発生し、大きな被害が出ています。強風に強い形状は災害リスクの軽減となり、大きな安心につながります。
三角形の屋根形状の場合、庇が出ていることで、吹き上げられた風により屋根材がめくれ上がってしまう危険性があります。特に台風などの強風時にはそのリスクが高く、注意が必要です。
メンテナンスがしやすい
フラット屋根の場合、メンテナンス時の足場が不要です。定期点検だけでなく、突発的なメンテナンスの場合でも、駆けつけた時にすぐに点検ができます。
住宅屋根のなかで一番多く使われている屋根材でスレート屋根というのがあります。
スレート屋根は10年ごとに塗り替えが必要とされているため、その度に足場代+塗装代で100万円前後のメンテナンス代が必要です。
フラット屋根の場合、の2つの素材があります。
- 防水タイプ
- 金属タイプ
防水タイプの場合は、一般的なスレート屋根と同じで10年ごとのメンテナンスが必要ですが、足場代がいらない分コストを抑えられます。
金属タイプの場合は耐久年数が長く、メンテナンス期間は約20年まで伸びます。
天井が高くなる
傾斜のある屋根の場合、屋根の下に懐をつくるため、室内天井の高さに制限があります。
フラット屋根の場合は、屋根の下にすぐ室内天井がくるため、天井を高くできます。面積が同じ部屋でも、天井が高くなることで広く感じます。
開放感があり、広く感じる部屋をつくりたい場合には最適です。
法規制の制限内でギリギリまで建てられる
住宅を建築する際に、建物の高さや建ぺい率、容積率などが建築基準法で規制されています。
建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建蔽率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない。
建築物の敷地及び構造 – 建築基準法(第五十三条)
建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下「容積率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値以下でなければならない。ただし、当該建築物が第五号に掲げる建築物である場合において、第三項の規定により建築物の延べ面積の算定に当たりその床面積が当該建築物の延べ面積に算入されない部分を有するときは、当該部分の床面積を含む当該建築物の容積率は、当該建築物がある第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域に関する都市計画において定められた第二号に定める数値の一・五倍以下でなければならない。
建築物の敷地及び構造 – 建築基準法(第五十二条)
そのなかで日照権というものがあり、隣の家の日照を守るために建物の高さや距離などの制限が定められています。
三角形の屋根形状は、外壁から庇がでていることから、制限内に収めるために居住空間を小さくして調整をします。しかし、フラット屋根の場合は、外壁から屋根が出ていないので、ギリギリまで居住空間を大きくできます。
太陽光発電の工事やメンテナンスがしやすい
近年(2022年8月時点)の異常気象や石油資源の高騰などにより電力供給が不安定となっています。
以前からの自家発電の流れが強まっていくなかで、太陽光発電設備を導入する住宅が増えています。都内では太陽光発電の設置が義務化する流れもあり、これからの住宅には必須の設備となる可能性もあります。
通常の三角形の屋根の場合、太陽光発電を設置するには足場や安全性の確保など、万全を期して行う必要があります。
フラット屋根の場合は、工事や設置後のメンテナンスがしやすいのも特徴としてあります。施工段階の足場がいらずに安全に作業ができ、しかも短時間で施工ができるのでコスト削減につながります。
購入前に知っておきたいデメリットとは
メリットの多いフラット屋根ですが、デメリットもあります。購入を検討する前にポイントを抑えておきましょう。
雨漏りのリスク
フラット屋根は傾斜が少なく、雨漏りのリスクが高いです。しかし、まったくの平らというわけではなく、1/50程度のゆるやかな勾配があります。
そのゆるやかな勾配の上を雨水が流れて排水溝に集まります。大雨の場合は一時的にたまるリスクがありますが、しっかりとした防水処理や勾配を施したフラット屋根であればそこまで大きなリスクにはなりません。
積雪のリスク
フラット屋根には積雪のリスクもあります。
雪はかなりの重量となるので、その分屋根の強度を上げておく必要があります。
積雪が多い地域では、フラット屋根に融雪の設備を設置することで対策しています。請負契約を結ぶ建築会社にどのような対策をしているのか確認しておきましょう。
上階に熱がたまりやすい
三角形の屋根の場合、屋根内部の空間が断熱空間となり、直射日光を受けた屋根の熱が伝わりにくいです。
フラット屋根の場合は屋根内部の懐が少なく、下に熱が伝わりやすいため熱がこもりやすい傾向があります。そこまで大きく変わることはありませんが、特に夏場の猛暑時期は温度を少しでも下げたいところではありますので、デメリットといえるでしょう。
断熱材や遮熱シートなど適切な施工をして対策をすることをおすすめします。
小屋裏収納がつくれない
三角形の屋根内部のスペースを有効活用する方法として小屋裏収納があります。
季節物やたまにしか使わない物をしまうスペースとして、物が多い家庭には重宝する空間です。
フラット屋根には小屋裏収納をつくれる屋根内部のスペースがありません。その分1階か2階に大きな収納スペースを確保してデメリットを解消するようにしましょう。
屋根はあくまで住宅の一部
フラット屋根について詳しく紹介しましたが、屋根を中心に建築計画を立てていくのはおすすめできません。
構造やハウスメーカーによって選べる屋根は違います。屋根選びから進めていくと多くの場面で選択肢が狭くなってしまいます。
建築計画を進めていく場合は、時間を要してでも多くの建築会社から話を聞きましょう。
比較検討することで後悔するリスクを抑えられます。