一般的な住宅ローンと異なり、保証会社を利用しないプロパー住宅ローン(プロパーローン、プロパー融資)は「審査に通りやすい」といわれていますが、その実態はどうでしょうか。
また、このローンには、どのような利点や欠点があり、申し込み前に注意すべき点は何でしょうか。
この記事では、プロパー住宅ローン(以下、プロパーローン)が他の住宅ローンとどう異なるのか、さらに実際のメリット・デメリットや利用時の注意点について詳しく解説します。
もくじ
プロパーローン(プロパー融資)とは
プロパーローンは、金融機関が保証会社を介さずに直接契約して融資するローンを指します。一方で一般的な住宅ローンは、保証会社を介して保証会社が契約者を保証したうえで、金融機関が融資するローンです。
保証会社は、契約者がローンの返済に対して返済が困難な状況になった際、契約者に代わって返済を行います。保証会社による保証がないプロパーローンでは、契約者による返済が困難になった際、金融機関が資金を回収できないリスクが高くなるでしょう。
一般的な住宅ローンでは、保証会社が関わるため、金融機関と保証会社のそれぞれが審査を行います。しかし、プロパーローンの審査は金融機関のみが行い、回収できないリスクが高まるため、審査が厳しい傾向にあります。
違い | プロパーローン | 一般的な住宅ローン |
---|---|---|
保証会社 | なし | あり |
審査 | 金融機関のみ | 金融機関と保証会社 |
回収リスク | 高い | 低い(保証会社から返済) |
また、プロパーローンを利用する人の主なニーズは以下のとおりです。
- 住宅ローンでは対応できない特殊な物件を購入したい
- 返済条件を細かく調整したい
- 不動産投資として物件を購入したい
- 初期費用を抑えたい
以上のようにプロパーローンは、通常の住宅ローンで対応できない条件で借り入れたい人が多く利用します。
審査に落ちないって本当なの?
プロパーローンは審査に落ちないという情報がありますが、これは誤解です。プロパーローンは、保証会社の関与がないため保証会社による審査には落ちません。
しかし、金融機関独自の審査は行われます。
プロパーローンでの審査は金融機関独自の判断基準になり、金融機関がすべてのリスクを背負うため、一般的な住宅ローンの審査より厳しくなるでしょう。返済能力次第では審査に落ちかねないため、安定した収入や資産があることを説明できると有効です。
プロパーローンのメリット
プロパーローンを利用するメリットは以下の3つです。
- 保証料がかからない
- 柔軟な返済条件を相談できる
- 特殊な物件や用途にも対応できる
それぞれの内容を見ていきましょう。
保証料がかからない
プロパーローンでは保証会社による保証を求められないため、保証料がかからない点がメリットです。
一般的な住宅ローンでは、保証会社が契約者に代わって返済不能時に保証の対応をしてもらうため、保証料を支払います。プロパーローンでは保証会社の関与がないため、保証料が不要です。融資にかかる初期費用を大幅に抑えられるでしょう。
柔軟な返済条件を相談できる
プロパーローンのメリットのひとつは、返済条件を柔軟に相談できる点です。一般的な住宅ローンは、あらかじめ決まったパッケージ型の返済条件が多く、融通がききにくい傾向があります。
一方でプロパーローンでは、据え置き期間や返済間隔、元金均等・元利均等といった返済方法まで、借り手の状況に応じて個別に相談しながら決められるため、より自分に合った条件で借り入れられるのが魅力です。
特殊な物件や用途にも対応できる
プロパーローンは、融資対象物件が特殊な条件や用途が不動産投資であっても申し込みができます。金融機関独自の審査を行えるため、融資に対して総合的な判断で対応ができるのです。
例えば、築年数が古い物件やリフォームが必要な物件など、一般的な住宅ローンでは融資対象外とされるケースでも対応できます。また、不動産投資を目的としたマンション購入でも、プロパーローンが利用されるでしょう。
物件自体が持つ収益性や借り手の返済能力、資産状況を総合的に勘案して判断するため、幅広いニーズに応えられます。
プロパーローンのデメリット
プロパーローンを利用するデメリットは以下の3つです。
- 一般的な住宅ローンより金利が高い
- 連帯保証人が必要とされやすい
- 取扱金融機関が少ない
それぞれの内容を解説します。
一般的な住宅ローンより金利が高い
プロパーローンは、一般的な住宅ローンに比べて金利が高く設定される傾向があります。これは、プロパーローンでは金融機関がすべてのリスクを負うため、そのリスクを金利に反映させているためです。
住宅ローンでは、保証会社がリスクを一部引き受けることで金利を抑えられますが、プロパーローンでは保証料が不要な代わりに、金融機関が直接リスクを負担します。そのため、一般的な住宅ローンに比べて金利が1%程度高くなる場合があります。
金利が高いと支払利息が増えるため、プロパーローンを利用する際には、金利の差が返済総額にどの程度影響するかをよく考えることが大切です。
連帯保証人が必要とされやすい
プロパーローンでは、連帯保証人を求められるケースが多くあります。金融機関は保証会社による保証がないため、借り手の返済能力が弱いと感じる場合、連帯保証人を必要とするのです。
連帯保証人は保証会社がいる場合と同様で、契約者の返済が困難になったら代わりに返済します。
ご自身の資産状況や収支状況から返済能力があると判断されれば、連帯保証人は不要と判断されるため、連帯保証人の有無は審査次第です。
取扱金融機関が少ない
通常の住宅ローンの取扱金融機関が、プロパーローンを取り扱っているとは限りません。プロパーローンはすべてのリスクを背負う点から収益性が低く、提供するメリットが少ないと判断されやすい金融商品です。
このため、地方銀行や一部の信用金庫などでの取り扱いが、一般的になっています。プロパーローンを検討する前に金融機関へ問い合わせを行い、融資条件などの確認を行いましょう。
プロパーローンを利用するときの注意点
プロパーローンを利用するときの3つの注意点を紹介します。
- 競売までの猶予期間が短い
- 融資審査に時間がかかる
- 保証会社による代位弁済がない
それぞれの内容を見ていきましょう。
競売までの猶予期間が短い
プロパーローンを利用する際、返済が滞った場合に競売手続きに移行するまでの猶予期間が短いことに注意が必要です
競売とは、金融機関が担保で設定している抵当権を行使して、裁判所を通じて物件を差し押さえ公開入札で売却することです。売却代金はプロパーローンの回収に充当できるため、金融機関はスムーズに回収できるでしょう。
一般的な住宅ローンの場合、保証会社が代わりに返済する代位弁済があり、その期間に借り手が返済を再開できる猶予が与えられます。
しかし、プロパーローンでは、保証会社による代位弁済がなく、返済の延滞または滞納が発生するとすぐに金融機関が競売手続きを進めるおそれがあります。
一般的な住宅ローンの代位弁済の手続きにおいては、保証会社は金融機関や借り手と1〜2カ月間のやり取りが発生します。代位弁済のないプロパーローンでは、代位弁済手続きの期間である1〜2カ月がないため、競売までの猶予期間が短くなります。
なお、競売物件は市場価格よりも低い価格で売却される傾向にあり、借り手にとって大きな損失になりかねません。
競売を避けるためにもご自身にあった実現可能な返済計画を立てて、確実に返済できる状況を維持しましょう。
融資審査に時間がかかる
プロパーローンでは、融資審査に多くの時間がかかります。一般的な住宅ローンと異なり、金融機関がすべてのリスクを背負うため、金融機関の融資審査が厳しくなるためです。
それぞれの審査項目に時間をかけますが、特に返済能力が詳細に確認されるでしょう。借り手の収入状況や資産状況、他の借入状況などを細かく審査します。
さまざまな確認資料が必要となり、資料の不備や追加資料の提出などで審査時間が長くなりかねません。
住宅ローン控除が適用されない可能性がある
プロパーローンでは、個別対応で柔軟な返済条件が組めるため、住宅ローン控除が適用されない場合が挙げられます。
住宅ローン控除は一定の条件を満たさなければ、税控除の適用を受けられません。住宅ローン控除の基本的な条件は以下のとおりです。
- 返済期間が10年以上
- 自ら居住すること
- 床面積が50㎡以上であること
- 合計所得金額が2,000万円以下であること
- 省エネ基準であること
以上を踏まえると、投資用物件の購入といった不動産投資を目的としたプロパーローンは対象外です。また、特殊な物件を購入するプロパーローンでは、省エネ基準や床面積などの該当確認が必要になるでしょう。
住宅ローン控除による税制優遇を期待している方は、契約前に住宅ローン控除を適用できるかどうか金融機関や税理士、建築会社に確認してみましょう。金融機関については建築会社も豊富な知識を持っているため、ご状況にあった機関を紹介してもらえます。