家探しの最初の課題が、「戸建てとマンションどちらを選ぶか」です。どちらも一長一短があるため、簡単に決断できないのは当然です。
今後のライフスタイルや家族の幸せに深く関わってくるため、慎重な判断が求められます。
本記事では戸建てとマンション、それぞれの特徴を再確認したうえで、決断をサポートするポイントについて解説します。
あなたにぴったりの住まいを見つける手助けをさせてください。
戸建てのメリットとデメリット
戸建ての最大のメリットは自由度の高さにあります。しかし裏を返すと、それだけ責任を負わなければならない、ということでもあります。
戸建ての具体的なメリットとデメリットを以下に紹介しましょう。
メリット | デメリット |
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メリット:自由度が高く、自分好みにカスタマイズできる
注文住宅であれば、自分好みに自由にカスタマイズが可能です。
間取りや素材、デザイン、設備まで自分の思いどおりになり、理想の家をつくれます。
一方、マンションはすでに完成しているため、手を入れられる部分は多くありません。
「オリジナルの家をつくりたい」というこだわりのある方には、戸建てのほうが向いています。
メリット:将来的な増改築が可能で、愛着がわきやすい
戸建ての自由度の高さは、建築時のみにとどまりません。
ライフスタイルの変化に合わせて、自由に増改築が可能です。以下は増改築の事例です。
- 子どもが小さいうちは広々としたプレイルーム、成長したら壁を立てて兄弟別々の部屋をつくる
- 二世帯住宅にするために増築する
- 親の介護をするために、手すりやスロープをつけてバリアフリー化する
家族が変わるとともに、家も変わっていくと考えると、家も家族の一員のようで愛着がわきます。
デメリット:引っ越しが難しく、近所付き合いに悩むおそれ
戸建ての購入には、数千万円の費用がかかります。さらに、マンションと比較すると売却が難しい傾向にあります。
住み始めてから土地の雰囲気が合わなかったり、隣人とトラブルを起こしてしまったりしでも、すぐの住み替えは難しいでしょう。
さらに、戸建てで起こった近所付き合いにかんするトラブルは、公平な視点で仲介してくれる人を見つけることが困難です。
最悪のケースでは、「村八分」のような状態に追い込まれてしまうことも考えられます。
マンションでも隣人とのトラブルは起こりえますが、管理組合に相談できる点は心強いといえます。
デメリット:修繕やメンテナンスに手間と時間がかかる
戸建ては修繕やメンテナンスが大変です。
マンションであれば、共用部分は管理会社が大規模修繕によるメンテナンスをしてくれます。
専有部分である室内の設備交換や修繕は自身で対応しなければなりませんが、特に大規模な工事となる屋根や外壁の修繕が不要な点は楽だといえるでしょう。
一方、戸建ては屋根から外壁、室内の設備にいたるまで、すべてを自分でメンテナンスする必要があります。
たとえば、木造の一戸建てに起こりがちなシロアリや洪水の被害も、自分で対処する必要があるでしょう。
費用がかかるのはもちろんのこと、修繕計画を自分で立てて業者を探し、工事を段取りするのは手間と時間がかかります。
マンションのメリットとデメリット
マンションの最大のメリットは、管理の手間を省きつつ機能性の高い家に住めることです。
その反面、ランニングコストがかかったり、騒音などのトラブルが生じたりすることがあります。
マンションの主なメリットとデメリットを以下に紹介します。
メリット | デメリット |
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メリット:セキュリティが充実しており、防犯性が高い
マンションはセキュリティが充実していることが多く、戸建てに比べて防犯性が高い傾向にあります。
オートロックや防犯カメラ、モニター付きインターホンなどは戸建てでも設置可能ですが、マンションであれば、24時間管理人常駐やパトロールなどの高度なセキュリティサービスも利用できます。
また、戸建て住宅より侵入経路が少ない点も、マンションの防犯性が高い理由です。
ただし、マンションのセキュリティサービスは物件によって大きな差があります。事前にしっかり確認しておきましょう。
メリット:共用施設が利用でき、利便性が高い
共用施設が利用できる点もマンションの大きなメリットです。
代表的な共用施設としては駐車場やエレベーターが挙げられますが、マンションによっては以下のような施設を有しているところもあります。
- 24時間ごみステーション
- 宅配ボックス
- 防災備蓄庫
- プライベートガーデン
- ゲストルーム
戸建てでは設置や管理が難しい上記のような施設も、マンションであれば導入可能です。
管理は管理会社が行うため、利用者が手入れをする必要もありません。
手間をかけずに便利な施設を使えるのは、戸建て住宅にはないマンションのうれしいポイントです。
デメリット:上層階では足音や子どもの転落に注意が必要
小さな子どもがいる家庭の場合、マンションの上層階に住むとさまざまな問題が起こりえます。
第一に挙げられるのが足音の問題です。
小さな子どもは家の中を走り回ったり、ジャンプしたりと動き回ります。
特にマンションはフローリングが多く、音が響きやすいため、階下に音や振動が届き、苦情になってしまう場合があります。
第二に挙げられるのは転落の問題です。高層階に住む子どもは、高所への恐怖心が育ちにくいともされています。
さらには、ベランダや窓から身を乗り出し、落ちてしまう事故も増えています。
フローリングに防音カーペットを敷く、窓にロックをつけるといった対策は可能です。
しかし、子どもの行動は予測不可能であり、完全にトラブルを防止するのは困難でしょう。
デメリット:管理費や修繕費、駐車場代などのランニングコストがかかる
マンションは管理会社に支払う管理費や、大規修繕のための修繕積立金、駐車場代などの共益費を毎月支払う必要があります。
さらには、マンションが便利であればあるほど、ランニングコストは高くなります。
毎月の住宅ローンに加えて、数万円単位の支出があると、家計を圧迫してしまうでしょう。
デメリット:ペットの飼育に制約がある
マンションではペット飼育が禁止されている場合が多いです。
ペットの臭いや鳴き声による騒音トラブル、汚損による物件価値の低下を防止するためです。
ペット飼育可能なマンションでも、種類や頭数が制限されているケースも多く、自由にペットを飼えません。
特に大型犬の飼育や多頭飼いは、マンションではハードルが高いです。
ペットをのびのびと飼いたい志向が強い方は、戸建てがおすすめです。
【状況別比較】あなたにとって最適な選択肢は?
戸建てとマンションはそれぞれにメリットとデメリットがあり、どちらが良いとは一概にはいえません。
自身のライフスタイルや重視したいポイントを明確にしたうえで、自分に向いている物件を選ぶことが重要です。
戸建てとマンションを比較する際に、特に重視すべきポイントについて解説します。
外出時の戸締り、ごみ捨てが楽なのはマンション
外出時の戸締りはマンションのほうが楽です。
戸建ての場合、玄関や勝手口、庭への出入り口などの開口部が多く、戸締りに時間がかかります。
一方、マンションは隣に住居があるため窓や扉が少なく、戸締りをすべき箇所も少ないです。
さらに、玄関はオートロックになっていることが多く、気軽に出かけられます。
また、マンションはごみ捨ても容易です。マンションの入居者専用のごみステーションが敷地内に設置されていることが多いためです。
戸建ての場合、ごみ捨て場は自治会の持ち回りで清掃することが多く、手間がかかります。
戸締りやごみ捨ては小さなことのように思えますが、このような小さなルーチンワークも毎日行えば、大幅な時間になります。
日々の面倒ごとを省力化できるのは、忙しい毎日にとってメリットです。
自分だけの庭やガレージが欲しいなら戸建て
自分だけの庭やガレージが必要なら、戸建てを選ぶと良いでしょう。
庭やガレージがあるマンションもありますが、共有施設のため利用に制約があります。
戸建てであれば、庭やガレージの大きさや位置を自分で決められます。
ガレージで洗車をする、庭でバーベキューをするなど、自由に使える点も魅力です。
通勤・通学の利便性を重視するならマンション
通勤・通学の利便性という点では、マンションに軍配が上がります。
マンションは駅近や駅に直結しているなど、利便性の高いエリアにあることが多いためです。
一方、戸建ては駅から離れた郊外に建てられることが多いです。
自然の豊かな場所で静かに暮らしたい人には向いていますが、通勤や通学に時間がかかる点はストレスになるでしょう。
自然災害に対するリスク管理も重要なポイント
物件を選ぶ際には、自然災害に対するリスク管理も忘れてはなりません。
まず重要なのは、ハザードマップを確認することです。
ハザードマップとは、国土交通省や各地方公共団体(自治体)がまとめた、被災想定区域や避難場所を表示した地図のことです。
ハザードマップで居住希望区域の災害リスクについて把握したうえで、災害に強い物件選びをしましょう。
マンションの3階以上は浸水リスクが少ない
ハザードマップを確認し、5~10mの浸水が想定されるエリアの場合は、マンションの3階以上が比較的安全です。
一般的に、マンションの3階は高さ13m程度であり、浸水リスクを避けられる可能性が高いためです。
しかし、浸水リスクはゼロではありませんので、水災への備えはしておきましょう。
地震の揺れに強いのは鉄筋コンクリート造のマンション
居住用物件の構造には一般的に木造、軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート造があります。
なかでも鉄筋コンクリート造は、地震の揺れに強いとされています。
地震の横揺れに強い鉄筋と、縦揺れに強いコンクリートを組み合わせているためです。
地震のリスクが高いエリアでは、鉄筋コンクリート造のマンションを選ぶと良いでしょう。
ただし、鉄筋コンクリートのマンションでも、以下のような構造の場合は地震の被害が大きくなるおそれがあるため注意が必要です。
- 1階部分が店舗になっている
- ピロティ構造になっている
1階が店舗、2階以上が住居になっているタイプのマンションでは、揺れが店舗部分に集中し、倒壊してしまうリスクがあります。
ピロティ構造とは、1階部分が柱のみで壁がない、もしくは壁が偏って建てられている構造のことです。
代表例としては、1階部分が駐車場になっているマンションが挙げられます。
大きな揺れが生じた際、ピロティ構造の部分に変形が集中し、倒壊してしまうリスクがあります。
戸建てやマンションの低層階は家具倒壊のリスクが低い
マンションは浸水や地震による倒壊には強いものの、特に高層階の場合は揺れが大きく、家具倒壊や家具の上から物が落下するリスクが高めです。
たとえ物件自体が無事でも、倒壊した家具の下敷きになってしまうおそれがあります。
家具倒壊のリスクを減らしたい場合は、平屋の戸建てやマンションの低層階を選んだほうが良いでしょう。
戸建てかマンションか迷ったときの確認ポイント
戸建てかマンションか迷ったときは、どのような日常生活を送りたいかに加え、将来的に自分がどうしたいかを考えることも重要です。
家は一生の中でも一番高い買い物であるといっても過言ではありません。後悔しないためには、長期的な視点のもと、慎重に検討する必要があります。
特に確認すべきポイントを以下に紹介します。
家の管理は自分でしたい?専門家に任せたい?
家の管理を自分でするか、専門家に任せるかという観点から検討するのも一つの選択肢です。
戸建て住宅では家の管理をすべて自分でします。つまり、修繕や設備交換のタイミング、工事を依頼する業者や使用する製品は、すべて自分で選びます。
手間や時間はかかりますが、予算や好みに合わせてカスタマイズできる点はメリットです。
一方、マンションでは共有部分の管理を管理会社に任せられます。
手間がかからない点がメリットですが、望まない修繕をされたり、修繕費用が割高になったりするリスクはあります。
自由度と手間の削減、どちらを重視すべきか考えてみると良いでしょう。
永住したい?住み替えたい?将来計画は?
将来計画も物件選びにおいて忘れてはならない要素です。
戸建ては一度購入すると買い替えが難しいため、多くのケースで永住することになります。
住み慣れた地域にずっと住みたい方にとっては魅力ですが、近所付き合いがうまくいっていない方やさまざまな場所に住んでみたい方、転勤族の方たちにとっては、デメリットにもなりえます。
対して、マンションは戸建てより売却しやすいため、住み替えも比較的容易です。
子どもが独立したらコンパクトなマンションに住み替えたい、退職したら実家のある地域に帰りたいなど、いつかは別の場所に引っ越したい方はマンションのほうが向いているでしょう。
自分だけの家感がある戸建て?失ったときの喪失感が少ないマンション?
注文住宅は自分の裁量で間取りやデザインを決められ、ライフスタイルの変化に合わせて増改築も可能です。
まさに「自分の城」という感覚を持て、単なる住居以上の価値を持つ存在になります。
しかし、家をキレイに保つために、庭や外壁のメンテナンスが必要で、時間と労力がかかります。
一方、マンションは既存の部屋を購入するため、戸建てのような愛着は持てないかもしれません。
しかし、その分、共用部分のメンテナンスに時間を割く必要はありません。
さらに、地震などの災害で家を失ったときの精神的なダメージや、外壁が汚れた際の失望感も比較的少ないでしょう。
住み替えや売却のしやすさもマンションのメリットです。