別居婚や週末婚など、夫婦生活のあり方が多様化している現代では、寝室を別々にする夫婦も珍しくなくなりました。しかし、「睡眠の質を向上させる」などの利点がある一方で、「コミュニケーションが減る」など、問題が起こるリスクもあります。
では、寝室が離れていても夫婦関係を良好に保つには、どのような方法があるのでしょうか。この記事では、夫婦別の寝室の割合と利点・欠点について紹介し、別室でも仲良く暮らすためのコツを紹介します。
寝室を夫婦別にしている人の割合は約22%
現代における住宅計画のための室要求構造の解明に関する研究「夫婦の就寝形態の特徴と寝室・私的領域の計画課題について」によると、寝室を夫婦別にしている人の割合は約22%でした。この結果は、ほかの多くの研究結果と一致しているといわれています。
特に昔の日本では「夫婦は一緒の部屋で寝るのが自然」という風潮があり、一軒家でもマンションでも夫婦同室就寝を前提とした住宅がほとんどです。
しかし、実際は夫婦5組中の1組は寝室を別にしているのです。理由を見ていきましょう。
予算や広さの制限ナシなら?別室希望は夫が約34%、妻が約46%
同研究によると、家の部屋数や広さ、予算などに制限のない場合、夫婦別室を希望する人は夫が約34%、妻が約46%です。つまり、妻の約半数が別室を希望していることがわかります。
画像引用:現代における住宅計画のための室要求構造の解明に関する研究 「夫婦の就寝形態の特徴と寝室・私的領域の計画課題について」図6 希望就寝携帯
理由として一番多かったのが「パートナーもしくは自分のいびきや寝相の悪さ」を理由にした「別寝安眠」で、夫の33%、妻の約47%を占めています。2番目に多い理由は「気兼ねなく読書やテレビを楽しみたい」や「プライバシーを尊重して」といった理由の「自律的時間要求」で、夫は27%妻は約31%という結果でした。
画像引用:現代における住宅計画のための室要求構造の解明に関する研究 「夫婦の就寝形態の特徴と寝室・私的領域の計画課題について」
寝室に対する認識は?妻と夫の考えの違いとは
そもそも寝室は、パートナーと過ごすための場所という認識なのでしょうか。同研究で、同寝の夫婦に「パートナーと過ごす居場所は」というアンケートを取った結果、寝室と回答したのは夫約25%、妻約36%でした。
一方、パートナーと過ごすのはリビングという回答は夫約95%、妻約89%で、寝室という回答を大きく上回ります。なお、寝室が別室の夫婦は、パートナーと過ごすのはリビングという回答がともに9割を超えていました。
画像引用:現代における住宅計画のための室要求構造の解明に関する研究 「夫婦の就寝形態の特徴と寝室・私的領域の計画課題について」
同室の夫婦でも、寝室がパートナーと過ごす場所という認識は低く、同室でも別室でもパートナーと過ごすための居場所はリビングという夫婦がほとんどでした。
つまり、寝室が同じ理由は「パートナーと過ごしたい」というより「それが自然だから」もしくは「なんとなく」という理由ではないかと考えられます。
夫婦の居場所はリビングという回答からも、寝室を同室にすることにこだわりすぎる必要はないかもしれません。
夫婦別にするメリット
前項で、寝室は別室でもよいのではないかという結論が出ました。この項では、寝室を夫婦別にするメリットを具体的に解説します。
好きな時間に起床・就寝しやすい
特に共働きの場合、夫婦で起きる時間や寝る時間が違うケースは多々あります。自分が寝ているときに相手が寝室に入ってきたら起きてしまいやすいですし、逆のこともあるでしょう。
しかし、寝室を別にすれば、お互い好きな時間に起床し、好きな時間に就寝しやすくなります。壁の厚さなど部屋の防音性を考慮する必要はありますが、隣同士で寝ているときより目覚まし時計をかけたり、夜にテレビや音楽を楽しんだりもしやすいでしょう。
毎日のことですので、起床や就寝のタイミングに気を使わなくてよいのは、メリットといえます。
また、部屋の明かりも気にする必要がないため、夜に読書や作業をする際も、パートナーに迷惑をかける心配がありません。
睡眠の質が向上する
夫婦で寝室を別にすると、睡眠の質が向上してよく眠れるようになるかもしれません。また、よくある隣の「いびきがうるさくて眠れない」「寝相が悪くて気になる」といった不眠の原因がなくなります。
また、男女で体感温度が違うというのもよくある問題ですが、寝室を別にすればエアコンを自分に合った温度に設定して、快適な睡眠タイムが過ごせます。
良質な睡眠は昼間の作業効率も上げてくれますので、仕事や家事がよりいっそうはかどるかもしれません。
夫婦の関係がよくなる
意外かもしれませんが、寝室を夫婦別にすると夫婦の関係がさらによくなることがあります。
別々の部屋では、お互い夜の時間を好きなように過ごしやすいです。自由に好きなことをしてリラックスすることで気持ちに余裕ができた結果、同室時よりパートナーに優しくできるかもしれません。そのため、特にプライベートな時間を重視する夫婦にとっては、ふたりの時間をより楽しく過ごせるでしょう。
また、質のよい睡眠を取ることで睡眠不足が解消でき、朝すっきりした顔でパートナーにあいさつできるかもしれません。
このように、寝室を別にすることでイライラが減った結果、パートナーに気を使えてより仲のよい夫婦になる場合も少なくありません。
夫婦別にするデメリット
この項では寝室を別にするデメリットを具体的に解説します。
会話が少なくなる
就寝前に話をする習慣がある夫婦は、寝室を別にすることで会話が少なくなってしまうかもしれません。特にお互い忙しい夫婦で、就寝前しか話す時間がないという場合は注意が必要です。
「寝室は別にしたい。でも会話がなくなったらどうしよう…。」と悩んでいる場合は、リビングで一緒に過ごす時間を作るなど代案を提案して、夫婦での会話を楽しむ工夫をしましょう。
パートナーの体調不良に気付かない
人間は夜に体調を崩すことが多いといわれています。たとえば、寝室に入ったあとに心筋梗塞など重篤な病気になったとき、同室ならパートナーの異変に気付きますが、別室だと朝まで気が付かないかもしれません。
また、中年以降の男性に多い、寝ているときに呼吸が止まったり浅くなったりする睡眠時無呼吸症候群も寝室が別だと症状に気付かないケースがあります。
睡眠時無呼吸症候群は放置しておくと、狭心症、心筋梗塞、脳卒中など命に関わる病気につながるリスクがありますので治療が必要です。
体調に不安がある場合は、寝室が同じ・別にかかわらず、早めに医療機関を受診しましょう。
コストがかかる
寝室を別にするということは、部屋がもうひとつ必要ですのでコストがかかります。もし余っている部屋がないという場合は引越しやリフォームが必要で、多くの費用がかかります。
部屋がある場合でも、使用する部屋が増えるぶん光熱費がかかります。特に最近の夏は夜も暑さで寝苦しいことが多く、一晩中エアコンを付ける人もいるでしょう。
エアコンを一晩中2つの部屋で使用したら、電気代は予想以上に跳ね上がるかもしれません。寝室を別にするときは、氷枕や扇風機などで暑さを和らげて、少しでも電気代を下げる工夫をすることをおすすめします。
別室でも愛情あふれる関係を築くには?その方法
たとえ別室でも、いつまでも仲のよい夫婦でいるのが理想の関係でしょう。この項では、別室でも愛情あふれる関係を築くための方法を解説します。
夫婦でよい関係を続けていきたい人はセパレートにする
いつまでも愛情あふれる関係でいるには、別室でも同室のメリットが享受できるセパレート寝室がよいでしょう。
セパレート寝室とは1つの部屋を収納や棚、もしくはカーテンやパーティション(パーテーション)などでソフトに仕切り、空間を2つに分ける寝室のことです。
もとは1つの部屋ですので、パートナーの気配をなんとなく感じながら、自分のプライバシーも確保できます。
また、セパレート寝室は距離を近づけたいときは仕切りを外し、1人の時間に集中したいときは仕切りを立てるというように、空間を自由に変えられます。
自分の時間を大切にしたいけどパートナーの体調や様子が気になる夫婦には、特におすすめです。
隣や向かい合わせなど、寝室同士の距離を近づける
セパレート寝室もいいけど、もっと自分の空間を大切にしたい方は、寝室同士の距離が近い別室がよいでしょう。
家の間取りにもよりますが、理想は隣や向かいあわせなど、パートナーの行動が何となくわかる距離にお互いの部屋があることです。
距離が近ければ、足音などで「夜トイレに行ったけど、なかなか戻ってこない」など、パートナーの異変に気付けるかもしれません。
また、体調が悪くなったり、急用ができたりしたときもすぐに呼びに行ける距離なら安心です。少し話がしたいときや一緒にいたいときも、距離が近いほうが何かと便利です。
居心地のよい部屋をお互いの寝室にする
別室にする場合、お互いの寝室はそれぞれ居心地のよい部屋に決めましょう。たとえば、一方は日当たりのよい6畳、もう一方はジメジメした4畳では不公平で、時間がたつにつれ不満がたまっていくかもしれません。
睡眠が中心になる部屋といっても、人間は人生の3分の1くらいは寝ていますから、思っているより多くの時間を寝室で過ごすことになります。
また、睡眠は次の日のために心身を回復させるための大切な時間です。大切な時間だからこそ、お互いに家の中でも居心地がよいと思える場所を選びましょう。
夫婦別室で失敗しないためには
夫婦別室で失敗しないためには、寝る場所をただ離すのではなく、セパレート寝室にしたり、寝室同士の距離を近づけたりして工夫したほうがよいでしょう。別室でもお互いの存在を感じられるような配慮や、必要なときに気軽に接触できる距離感を保つことで、夫婦のコミュニケーションや関係性を維持しやすくなります。
また、愛情あふれる関係をずっと築いていくためには会話や思いやりはもちろん、家の間取りや寝室のタイプも重要です。
実際にモデルハウスを見て、夫婦で理想の寝室について話し合ってはいかがでしょうか。まずは、住宅展示場に出向いてイメージをふくらませ、お互いの意見を聞いてみましょう。
なお、当メディアのメタ住宅展示場は、自宅にいながら全国各地のモデルハウスを360度自由に見渡せます。特に「展示場に出向くのが大変」「忙しくて時間がない」という方は、ぜひ寝室づくりの参考にしてください。