総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査 土地集計結果」によると、平屋の数は2000年~2005年時点では7.5%でしたが、2018年には12.8%、2020年には11.8%と右肩上がりで増え続けています。人口減少により新築住宅の着工数が年々減少傾向にあるなかで、着工数が増え続けていることを考えると、ひそかな平屋ブームといえます。
平屋ブームの理由は、以下のようなことが挙げられます。
- リモートワーカーが増えて都心に住む必要性がなくなり、若い人が平屋に興味を持つようになった
- 高齢化により階段がなく段差も少ないバリアフリー住宅として注目されるようになった
平屋住宅は素朴なイメージがあるかもしれませんが、だからこそ低価格でも豪邸にすることが可能です。本記事では平屋を豪邸にしたい方へ、平屋が豪邸かどうかの判断基準、平屋を豪邸かつおしゃれに見せる方法、低予算でも豪邸に見える平屋にするコツを紹介します。
平屋が豪邸かどうかの一般的な判断基準
平屋が豪邸かどうかの一般的な判断基準は次のとおりです。
- 天井が高いかどうか
- 敷地面積は100坪以上かどうか
- 外構が豪華に見えるかどうか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
天井が高いかどうか
広くて開放感があると豪邸に見えやすいです。高い天井にすることで、縦空間に開放感が生まれ、実際の部屋の大きさよりも広く見える効果があります。
一般的に天井の高さは法律で決まっていますが、平屋であれば、高さ制限に引っかからずに上部を開放的につくれます。
また、天井を勾配にするなどしてあえて室内に屋根の形を見せるような設計にすると、全体的な空間の印象がグッとおしゃれに変わります。
天井を高くすることは採光面でもメリットがあります。高窓などを設けると、より高い位置から太陽の光を取り入れられ、家全体に光が行き届き明るい雰囲気になります。
敷地面積は100坪以上かどうか
ゆとりのある広い土地に建築することも、豪華と思われる判断基準のひとつです。住宅金融機構の「2021年度フラット35利用者調査資料」によれば、2021年度の注文住宅の床面積は全国平均で123.8㎡(約37坪)でした。100坪の土地であれば、注文住宅における床面積の平均値の2.5倍以上もあり、その豪華さが伺えます。
屋外の空間を贅沢に確保すると、間取りはもちろん、外構など全体的な設計の自由度が高まります。たとえば、広い敷地を活用し、車を収納するビルトインガレージを設置することで、高級感のあるおしゃれな外観になります。ガレージは玄関周りの収納である、エントランスクロークともつながっているので、気軽に行き来ができる点も魅力です。
外構が豪華に見えるかどうか
豪華に見えるポイントは、建物本体だけではありません。外構に広々としたスペースやおしゃれな植栽があると、広い敷地に佇む豪邸のような印象です。
外構の植栽を生かしてリビングに大きな窓を設け、中庭の緑を取り込むような設計にすると、中からも外からも高級感が漂います。外構に飾る植栽はお手入れをして、きれいな状態を保つのも大切なポイントです。
豪邸=おしゃれではない!平屋をおしゃれに見せる方法
水平方向への広がりが平屋の魅力ですが、天井と床が全面フラットなままでは、プレハブのようにのっぺりとした単調な印象になりかねません。つまり、ただ広いだけの豪邸=おしゃれではありません。
随所に紹介するような工夫をすることで、空間に変化が生まれ、単調な印象を避けられます。
中庭や坪庭を設ける
中庭や坪庭をつくると、建物と庭に一体的なつながりが生まれ豪華に見えます。平屋は地面との距離が近いため、建物の中心やリビング前などに中庭を設ければ、高原に佇むような雰囲気が醸し出され、高級感や贅沢感が増します。
写真のようにコの字型の建物にして、コの字の空いた部分に中庭を設ける間取りでは、高級感を感じさせるだけでなく、ある程度建物で囲まれることでプライベートな空間を確保しやすいのも魅力的です。屋内に3方向の窓が設置されるため、すべての部屋の日当たりがよくなり、明るく風通しのよい開放的な印象変わります。
外観にこだわる
外観も平屋をおしゃれに見せるポイントのひとつです。原則として、床から上階までの高さとその軒の高さをなるべく低く抑え、建物が横に長い見た目にすると美しく見えます。
平屋では、屋根が横に美しく流れる片流れ屋根や、切妻屋根が人気の屋根形状で、片流れ屋根の場合、家の顔になるファザード、つまり建物正面からの外観全体が道路側から見えるようにすると上品かつ豪華な印象です。
高さの変化でメリハリをつける
設計によっては単調な印象になりかねない平屋ですが、天井や床の高さに変化をつければ空間にメリハリが生まれます。
たとえば、形状や空間の異なる2つの空間のあいだに天井が低いスペースをつくるとのっぺりとした印象が薄れ、違和感なくおしゃれに変わります。
天井に少し高低差を設ける「折り上げ天井」にすれば空間が広く見えますし、天井を高くする場合は、床を40cmほど掘り下げると視線が地面に近づき安定感と開放感が得られます。
床の段差で空間を分ける
ひとつながりの空間でも、高低差をうまく生かせば、視覚的な広がりのあるおしゃれな平屋になります。簡単に取り入られる形状として、ダウンフロアが挙げられます。
ダウンフロアとは、床を一段下げて、空間に変化を持たせたフロアのことです。緩やかにリビングとダイニングをつなげると、床や天井の高さが変わり、空間にメリハリが生まれ高級感が感じられます。
ダウンフロアは、基礎から冷気が伝わるケースもあるため、基礎断熱などの工夫をするとよいです。
中庭+デッキで庭との距離を縮める
リビングから地続きのウッドデッキを設け、屋内と屋外の境目をフラットにすると一体感が生まれてよりおしゃれになります。
室内床とウッドデッキとの段差を約25cmに抑えれば、より連続感が得やすいです。平屋ならではの美しく深い軒に守られたウッドデッキは、朝ご飯やカフェ、バーベキューなど毎日の家族の楽しみが生まれます。
平屋の価格相場
一般的な平屋の価格相場と、豪華と呼ばれる平屋の価格相場を紹介します。
一般的な平屋
「お家のいろは」によれば、一般的な平屋の本体価格の坪単価の相場は、約40万~60万円といわれています。
住宅金融支援機構の「2021年度フラット35利用者調査資料」によると、注文住宅の床面積の全国平均は124.4㎡(約38坪)です。ちなみに、建売住宅の住宅面積の全国平均は101.1㎡(30坪)です。
平屋の場合、階段や階段周りの廊下が少なくて済むぶん、2階建てと比べ約3坪分、坪数が少なく済むため、一般的な広さは27坪~35坪前後です。
豪邸と呼ばれる平屋
豪邸の雰囲気を味わえる平屋としては、下記の商品などが候補に挙がります。
ハウスメーカー | 坪単価(万円) | 商品 |
---|---|---|
ダイワハウス | 75~100 | xevoΣ(ジーヴォシグマ)平屋 xevoGranWood(ジーヴォグランウッド)平屋 |
積水ハウス | 80~100 | 里楽(りらく) 平屋の季(ひらやのとき) |
一条工務店 | 63~83 | i-smart、i-cube |
住宅のミサワホーム(ハウスメーカ-) |
60~100 | Gran Link HIRAYA SMART STYLE「A」 MJ Mood HIRAYA |
使う建材や仕様のグレードなどによっても変わりますが、平屋×豪邸を建てる場合の相場は、いずれも約80~85万円です。
大手ハウスメーカーよりも地域の工務店のほうが安い傾向にあるため、値段を抑えたい場合は、希望の地域の工務店を探して見るのもポイントです。
低予算でも豪邸に見える平屋にするコツ
低予算でも豪邸に見える平屋にするコツを紹介します。
土地代を節約して郊外に建てる
平屋は水平方向に広いため、2階建てや3階建てと同様の延床面積を取ろうとすると、それだけ広い土地が必要です。たとえば、都心の坪単価を約100万円とすると、50坪の土地を購入すれば土地代だけで約5,000万円します。
地方で駅からも離れた郊外の土地であれば、坪単価が約10万~20万円の土地も多くあります。地方で約10万~20万円の土地に50坪の平屋を建てる際の土地代は500万~1,000万円です。この計算でいくと、都心で平屋を建てるより、約4,000万~4,500万円安くなります。
都心と地方郊外における50坪の平屋の土地代の違いは次のとおりです。
- 都心に建築した場合の土地代:100万円/坪 × 50坪=5,000万円
- 地方に建築する場合の土地代:10万~20万円/坪 × 50坪=500万~1,000万円
法律により、土地に建てられる建物の広さ、つまり建築面積には制限があります。建築面積は建ぺい率※1と容積率※2によって決まります。
- ※1建ぺい率
- 土地に建物を建てる際、敷地面積に対して建物が占める割合のこと
- ※2容積率
- 土地に建物を建てる際、敷地面積に対して建物の容積がどの程度までに限定されるかを示す割合のこと
2階のない平屋は、欲しい広さを確保するために十分な敷地面積が必要ですので、土地代ではなく、建物本体にお金をかけることで、低予算でもおしゃれな平屋にできる可能性がグッと広がります。
複雑な間取りにしすぎない
一風変わった複雑な間取りは、高級感が増すイメージがあるものの、建物の建築面積が広くなるほど外壁や建材、床材などを使う量が増えてしまい、割高感が増してしまいます。
特に、2階建てと比べ、平屋は基礎にお金がかかります。複雑な形状にすればするほど、基礎にお金がかかってしまい、2階建てより割高になることがあります。
フルオーダーではなくセミオーダーにする
ハウスメーカーや工務店の商品には、設計方法の違いにより、大きく分けてフルオーダー(完全自由設計)、セミオーダー、規格住宅の3種類あります。それぞれの特徴は次のとおりです。
フルオーダー(完全自由設計) | セミオーダー | 規格住宅 |
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このうち、おしゃれな平屋にするには、セミオーダーの住宅がおすすめです。たとえば、下記表は2023年2月現在の住友林業の坪単価ですが、フルオーダーよりセミオーダーのほうが坪単価は20万円安いです。
セミオーダーの平屋の坪単価 | フルオーダーの平屋の坪単価 |
---|---|
80万円/坪 | 100万円/坪 |
ハウスメーカーによって仕様はさまざまですが、設計方法や標準仕様、間取りの自由度などに至るまで、セミオーダーでもフルオーダーとほぼ変わらない仕上がりが期待できるところも多いです。
モデルハウスの間取りを参考にする
モデルハウスはハウスメーカーや建築会社が自社の施工実績をアピールするために存在します。
自社の魅力をアピールするためのモデルハウスですから、時代のニーズを先取りした間取りであったり、センスのよい外観、内装であることがほとんどです。そのため、豪邸、おしゃれと呼ばれる平屋を建てるなら、ぜひ参考にしたいところです。当メディアのメタ住宅展示場は、全国のモデルハウスをクリックひとつで見学できるのでぜひお試しください。