戸建て住宅の購入を検討する際には、多くの人が建売住宅と注文住宅の両方を検討します。最近ではオシャレな建売住宅が増えていることから、注文住宅と外観上の違いはないように思えます。
それでは、建売住宅と注文住宅を選ぶ際のポイントはどこにあるのでしょうか。選ぶポイントを紹介します。
もくじ
建売住宅と注文住宅はどっちが多い?
建売住宅と注文住宅、多くの人から選ばれているのはどちらでしょうか。ここでは住宅金融支援機構が公開している「2021年度フラット35利用者調査」より、建売住宅と注文住宅の棟数と価格差について解説します。
なお、引用するデータは住宅金融支援機構が集計している融資承認データとなり、実際の棟数や価格とは若干異なります。
建売住宅と注文住宅の割合
建売住宅と注文住宅の割合は、以下のとおりです。
戸建て種別 | 2020年度(棟) | 2021年度(棟) |
---|---|---|
建売住宅 | 19,691 | 15,574 |
注文住宅 | 34,053 | 28,629 |
地域性はあるものの、全体として注文住宅のほうが棟数が多いことがわかります。2020年、2021年度ともに60%以上が注文住宅です。また、注文住宅は中古マンションや中古戸建てを含めた全種別の中でももっとも件数が多く、人気の高さを裏付ける結果となりました。
価格差はどのくらいある?
2021年度の結果によると、建売住宅の価格は3,605万円に対し、注文住宅は3,572万円です。価格差が約30万円しかありませんが、注文住宅は土地の費用がさらにプラスされるため、建売住宅よりも価格が高くなるでしょう。
土地の価格は地域によって大きく変動するため、建築予定のエリアでは土地相場がどのくらいなのかをあらかじめ把握しておくことが重要です。
不動産業界の人はどちらを選ぶ?
建築や土地のプロである不動産業界の人は、注文住宅を第一に検討する傾向にあります。その理由として、家づくりに携わる経験が多いことから、その経験を活かし、より反映しやすいのが注文住宅だからです。
月に何棟も契約し顧客と商談することで、自然に建築のノウハウや成功事例、失敗事例を学べます。そのため、間取りや設備などで後悔しやすい注文住宅でも失敗するケースが少なく、より最適な家づくりができます。
このようなアドバンテージがあるため、不動産業界の人は注文住宅を選ぶことが多いです。ただし、都市部に住んでいる場合や不動産業界の中でもマンションビルダーや建売ビルダーで働いている人は、注文住宅以外を選ぶ人も多いでしょう。
建売住宅を選ぶべき人、注文住宅を選ぶべき人をそれぞれ解説
全体的に注文住宅を選択する人が多く、不動産のプロも注文住宅を選ぶ傾向にあります。しかし、だからといって建売住宅の選択肢をなくすべきというわけではありません。
建売住宅を選ぶべき人と注文住宅を選ぶべき人の特徴について、それぞれ解説します。
建売住宅を選ぶべき人
建売住宅は注文住宅とは違ったメリットを多く持っており、要望が合えばおすすめの住宅だといえます。建売住宅を選ぶべき人の特徴について解説します。
すぐに新居生活をスタートしたい人
注文住宅は土地が決まっていても、請負契約から入居までに約半年〜1年かかります。そのため、社宅の退去時期や賃貸住宅の更新、子どもの入学などで引っ越しのタイミングが決まっている人には、注文住宅は日程上のリスクがあります。
その点、建売住宅であれば引き渡し後にすぐ入居できます。買い手の資金準備ができ次第引き渡しとなるため、最短で契約から2週間で引っ越しが可能です。このように、家の購入を急いでいる人は建売住宅を検討すべきでしょう。
コスト重視の家を買いたい人
注文住宅は土地が別途必要です。そのため、エリアによっては3,000万円以上の価格差が生じるケースもあるでしょう。
また、注文住宅はハウスメーカー独自の理念があり、メーカーによっては過度ともいえる品質維持費用をかけています。その点、建売住宅は最適なスペックで建築されており、さらには建築資材も工場で大量生産することでローコストと高品質を実現しています。
このように、品質のブレがなく安定した住宅を安く買いたい人には、建売住宅がおすすめです。
立地を優先させたい人
注文住宅は希望の間取りや敷地面積を確保できる土地を、希望エリアで探すことになります。そのため優先順位次第では、駅から遠い土地を購入することも考えられます。
また、駅近など立地がよい場所で土地購入する場合は、価格が高くなります。そして、注文住宅を検討する人の多くは、間取りにこだわりたいという要望を持っています。つまり、土地にかける費用が少なくなり、立地がよくない場所に注文住宅を建てるケースが多いといえるでしょう。
一方、建売住宅は立地がよい場所に建築される傾向にあります。なぜなら、建売住宅は売主が建築会社であり、建売住宅そのものが商品だからです。つまり、売れない場所に建築しても赤字になるため、立地のよい場所にしか建築しないことになります。
このような理由から、立地を優先したい人であれば建売住宅を検討することをおすすめします。
注文住宅を選ぶべき人
注文住宅を選ぶ人は多いですが、どのような人が注文住宅を選ぶのでしょうか。注文住宅を選ぶべき人の特徴を解説します。
こだわった家づくりがしたい人
建売住宅を検討しない理由のひとつに、同じような家に住みたくないという要望があります。そして、このような要望を持つ人は注文住宅を選ぶ傾向にあります。
建売住宅はよくも悪くも、どこにでもある家です。そのような家を建てることで買い手が間取りで悩むことがないようにし、暮らすイメージがつきやすいようにしています。
一方、注文住宅は間取りからドアノブの種類までを決めることになるため、自身のこだわりを多く取り入れた家づくりができるでしょう。
このように、「家を購入したい」のではなく「家をつくりたい」という人は、注文住宅がおすすめだといえるでしょう。
ランニングコストを重視したい人
注文住宅は建売住宅よりも高くなりますが、ランニングコストは建売住宅よりも下がる傾向にあります。
建売住宅であれば、外壁塗装や屋根とベランダの防水処理などを10年に1度のペースで実施する必要があります、100m2の一般的な住宅であれば100〜120万円かかります。そのため、50年住む場合は500万円以上のメンテナンス費用を負担しなければなりません。
しかし、注文住宅の多くは高性能な外壁を使用しており、保証期間も60年と長期間に及ぶケースが多いです。そのため、メンテナンス費用を大きく下げられます。また、高品質な家は固定資産税や火災保険の優遇が受けられ、ランニングコストが下げられるメリットもあります。
このように、単純な建築費用だけでなく将来にわたってランニングコストを下げたい人は、注文住宅を選ぶべきです。
資産価値を残したい人
気密性が高く断熱性能を維持できる家は、何十年経っても家の中が快適です。また、気密性の高い家は有害物質の侵入を防ぎ、家屋内の空気も外に漏れにくいため光熱費を抑えられます。
このような住宅は、将来売却を検討することがあっても、高い価格で売却できる可能性があります。築30年を超える家を売却する場合はほとんど土地としての資産価値しか残りませんが、家の価値を残すことで多くの売却益を得られます。
このように、大切な家の価値を高く維持したい人が注文住宅を選ぶ傾向にあります。
建売住宅でも注文住宅でも、取り入れたいもの
建売住宅と注文住宅のどちらでも、取り入れることで大きな効果を得られるポイントがあります。以下で紹介するポイントを、建売住宅であれば選択時の参考に、注文住宅であれば間取り設計時の参考にしましょう。
太陽光発電システム
「太陽光発電は電気代がなくなる代わりに設備費用がかかるため、実際は得ではない」という考え方があります。しかし、太陽光発電は得をするためのシステムではなく、負担をゼロにするシステムだと覚えておきましょう。
地域によって多少名称は変わりますが、電気料金の明細には「再生可能エネルギー賦課金」という費用項目があり、電気を利用する人全員が負担しています。集められた再生可能エネルギー賦課金は、電力会社が買取制度で電気を買い取るための費用に回され、最終的には再生可能エネルギーで電気をつくっている方に届くようになっています。
つまり、太陽光発電とは毎月支払っている費用を回収するシステムだといえます。さらには蓄電池と組み合わせることで災害時でも電力を使用できるようになります。
このような理由から、太陽光発電システムの導入は検討すべきだといえます。
駐輪スペース
駐車スペースは重要ですが、同じくらい駐輪スペースも重要視すべきです。駐輪スペースがあることで自転車を置く場所が定まり、駐車場に自転車があるといったストレスがなくなります。
また、駐車スペースから離れた場所に駐輪スペースを設置することで、車に傷をつけられるおそれがなくなります。そして、子どもが成長して友達が自転車で遊びに来ることも想定し、数台分の駐輪スペースを設置しておくとよいでしょう。
日当たり
建売住宅でも注文住宅でも、日中の日当たりは十分に確認しましょう。
ただし、すべての部屋が日当たりのよい状態である必要はありません。リビングなど、家族が長時間いる場所の日当たりを確保し、普段使わない場所や水回りの採光時間は短くても問題ありません。
日当たりは周辺環境によって大きく変わる可能性があるものの、快適な住環境を確保するうえでは重要な要素です。そのため、建売住宅と注文住宅のどちらを選択する場合であっても、必ず確認しましょう。