本記事は「間取りのイメージがわいたため、やり方・ポイントを知ってゾーニングを始めたい」と考えている方に向けています。そもそも「ゾーニング」とは何か、そしてゾーニングに際しての重要なポイント、やり方について解説します。
建て主であるあなたのイメージを設計者などの第三者に正確に伝えられるよう、この記事を通してゾーニングのやり方とポイントを把握しましょう。
もくじ
ゾーニングとは?生活動線との違いは?
まずはゾーニングの意味と、意味が混同してしまいがちな生活動線との違いについて解説します。
広い意味のゾーニング
ゾーニングとは空間を用途別に分けて配置することを意味します。
ゾーニングが使われるシーンや業界はさまざまで、たとえば都市計画や医療業界、マーケティング業界などで使われています。
家のゾーニング
今回、実施しようとしている住宅のゾーニングは広義的な意味と同じように「住居の必要な空間や施設を用途ごとに配置すること」を意味します。
具体的には、お風呂や脱衣所、洗面所をひとつのゾーンとして、またリビング・ダイニングを別のゾーンとしてそれぞれの用途ごとにゾーンを定義し、それらを配置するイメージです。
ゾーニングは建物の内側に限った話ではなく、庭や駐車スペースといった建物の外にも配置をおこないます。つまり、建物とその土地全体の空間と施設を用途ごとに配置することを、ゾーニングと呼ぶのです。
生活動線との意味の違い
ゾーニングの検討をしていくうえで「生活動線」と意味を混同させてしまう方もいます。これらの意味の違いについて認識しておきましょう。
ゾーニングと生活動線の意味は、それぞれ以下のとおりです。
- ゾーニング
- 住居の必要な空間や施設を用途ごとに配置すること
- 生活動線
- 家のなかで生活している人がある空間から別の空間へ移動するときに通る動きを線にしたもの
配置する作業そのものを指す「ゾーニング」と移動の過程を示した線を指す「生活動線」では、意味はまったく異なります。作業過程で混同しないようにしましょう。
ゾーニングで重要な4つのゾーン
住空間のゾーニングで重要なゾーンは大きく分けて、それぞれ「パブリックゾーン」「プライベートゾーン」「サービスゾーン」の3種類あります。また、ゾーニングによっては「通路ゾーン」も必要になることがあります。
以下では、4つのゾーンに含まれる部屋や施設、各ゾーンの重要ポイントについて解説します。
リビングなどのパブリックゾーン
住まいのなかで住人が多くの時間を過ごす空間を「パブリックゾーン」と呼びます。
LDKに当たるリビングやダイニング、キッチンがこのゾーンに含まれます。テレビを観たり、食事を取ったりする空間であり、住居面積の大半を占めるゾーンであるともいえます。
パブリックゾーンで重要なポイントは「共同で使うための、公共の、誰もが使用できる」ゾーンであるという点です。
住んでいる人はもちろん、来客が行き着く空間でもあるため誰にでも快適だと思える空間として成立しているかを確認しましょう。
寝室などのプライベートゾーン
続いて、「プライベートゾーン」です。プライベートゾーンは住人が 各々の時間を過ごす空間を指します。
主に、寝室や子ども部屋が含まれます。また、書斎や和室などもこのプライベートゾーンに含まれます。
プライベートゾーンで重要な点は、パブリックゾーンとの距離です。パブリックゾーンと寝室、子ども部屋が近い距離にあると、コミュニケーションをうまく図れる居住空間にできますし、反対に距離をおくと各々のプライベート空間を十分に確保できます。
書斎や仕事部屋を住居に設ける場合はパブリックゾーンとの距離がとても重要で、十分な考慮が必要です。
浴室などのサービスゾーン
洗面所やお風呂、トイレなど人の生活に必要な施設や空間を含んだゾーンを「サービスゾーン」と呼びます。家事の効率化を図りたい人にとっては、特に意識して配置したいゾーンです。
パブリックゾーンにあるキッチンからサービスゾーンまでの動線ひとつで、家事にかける時間や負担が大きく変化するため、生活習慣やニーズを踏まえてゾーニングすることが大切です
各ゾーンとの接点である通路ゾーン
住まいのゾーニングは主に上記で解説した3つですが、もうひとつ「通路ゾーン」と呼ばれるゾーンもあります。
パブリックゾーンからサービスゾーンに通じる廊下を設ける場合などは、この通路に関するゾーニングも必要です。
必ずしも必要なゾーニングとは限らないのが、通路ゾーンの特徴です。たとえば、子どもやパートナーが寝室へ向かう際にパブリックゾーンを介してたどり着けるようにするなど、目的をもって通路ゾーンをパブリックゾーンに含める方法もあります。
このように、目的や住まいのテーマに合わせて通路ゾーンを設けるか否かを判断しましょう。
ゾーニングの手順
ここまでゾーニングの種類と重要ポイントを解説しました。ここでは、ゾーニングの手順について解説します。
ゾーニングの手順は以下のとおりです。
- 日照や通風に適している箇所を把握する
- 敷地内のゾーニングをする
- 玄関の配置を決める
- 1日の生活の行動パターンをイメージする
- 玄関以外のゾーニングをする
ゾーニングは空間、施設を用途ごとに配置する単純作業に見えますが、敷地全体の環境を把握し、1日の行動パターンを理解してからおこなうことが重要です。
以下で紹介する手順を参考に検討しましょう。
1.日照や通風に適している箇所を把握する
まずは、住宅が建つ周辺や敷地の日照、通風環境を確認しましょう。
このステップを除いてしまうと日当たりのよいスペースに窓があるなどで必要のない空間を設けてしまったり、風通しの悪い設計をしてしまったりと失敗につながります。
敷地周辺の様子を確認するためにも足を運び、なるべく複数回、違う時間帯を狙って日照、通風に適している箇所を確認しましょう。周辺の音や人通りの多さなど日照、通風以外の気付きもゾーニングに反映できるでしょう。
2.敷地内のゾーニングをする
敷地周辺の様子を確認したら早速、ゾーニングをおこないます。はじめから住空間のゾーニングをするのではなく、まず敷地全体のゾーニングをおこないます。
大きく4つのゾーンに分けて「建物ゾーン」「庭ゾーン」と、住宅の門から玄関までのスペースである「アプローチゾーン」「駐車、駐輪ゾーン」の配置を決めましょう。
住宅のテーマや庭、駐車スペースを設置したいか否かで必要なゾーンは変わりますが、これらは敷地内でも大きな面積を占める空間のため先におこなう必要があります。各ゾーンの広さ、必要性を理解しなければ住空間の大きさを定義できないためです。
まずは敷地内に車、自転車、バイクをどれだけ保管するのか、門から玄関までのスペースがどれだけ必要なのか、どれだけの庭が必要なのかを把握して、ゾーニングしましょう。
ゾーニングのポイントは庭と住宅の配置です。南に庭を、北に住宅を配置することで庭の植物がよく育ちますし、ガーデニングのやりやすさにつながります。ガーデニングが趣味の方は、参考にしてください。
3.玄関の配置を決める
ここからは、住宅内をゾーニングします。
住宅内のゾーニングでおすすめなのが、最初に玄関を配置することです。玄関は住空間のなかで、もっとも決定しやすいといわれています。
また、次に配置する「パブリックゾーン」「プライベートゾーン」「サービスゾーン」の基準になるのも玄関です。一面だけ道路に面している敷地では、玄関の向きや位置が限定されますが、敷地によっては住宅の中央や端などいくつかのパターンに分けて玄関を配置できます。
4.1日の生活の行動パターンをイメージする
主な3つのゾーンを配置する前に家族やパートナーのライフスタイル、生活習慣をイメージしましょう。
起床から就寝まで、1日のなかでどのような行動が多いか把握しておくと、ゾーニングしやすくなります。行動パターンは、なるべく具体的にイメージすることが大切です。
何時に起床するのか、起床後はすぐに顔を洗うのか、それとも朝ごはんを食べるのか、お昼はどこで食べるのか。また、何時に就寝するのか、就寝前はどんな時間をどこで過ごすかなど、できるだけ多くの行動を挙げておきましょう。
そうすることで家族やパートナーの行動がイメージできるようになるため生活動線が見え、快適な住空間のゾーニングができます。
5.玄関以外のゾーニングをする
最後は、実際に玄関以外のゾーニングをおこないます。
「パブリックゾーン」「プライベートゾーン」「サービスゾーン」を、それぞれ玄関に対してどのように配置するのか、関連性のある部屋を隣に配置するのかなど、暮らしのテーマに合わせて検討しましょう。
ポイントは「パブリックゾーンとプライベートゾーンの距離」です。
2つのゾーンを近づけて常に家族、パートナーの様子を把握して、コミュニケーションをうまく図れるような住空間にするのか、それとも仕事、就寝環境とリビングやダイニングをはっきり区別できるような住空間を実現するのかで住宅の雰囲気が変わります。
ある程度ゾーニングできたら、1日の行動パターンや住宅のテーマを設計者に伝え、アドバイスをもらうのもよいでしょう。