家を建築するときは、家のデザインや設計、設備、住宅ローンの返済プランなども大事ですが、もっとも重要なのは土地選びです。選んだ土地によって建てられる家や生活スタイルが決まります。早く家を建てたいと逸る気持ちを抑えて、慎重に土地選びをしましょう。
土地探しをするときの注意点
土地の購入で失敗しないためには、しっかりと調べておくことが大切です。土地探しで注意すべきポイントについて解説します。土地を購入するときは、焦らずにじっくりと調べましょう。
土地周辺の環境を何度も調べる
土地の本当の姿はデータだけではわかりません。何度も現地へ足を運んで周辺環境などを調べてみましょう。
たとえば通勤や通学に関して調べるのであれば、次の点は確認しておきたいところです。
- 駅まで徒歩で何分かかるか
- 駐輪場に空きはあるか
- 通勤・通学時間帯の電車の混み具合
- 電車の運転間隔
土地周辺の治安も確かめておきたいところです。地域の治安を調べるときは、次のことをチェックしておきましょう。
- ゴミ出しのマナー
- 落書きが多いかどうか
- 街灯などの整備状況
また、コンビニのトイレが借りられるかどうかも、治安を調べる方法のひとつです。治安の悪い土地では利用者のトイレの使い方が悪く、トイレを借りられないことがあります。
ハザードマップで災害リスクをチェック
土地を購入するときは、必ずハザードマップを確認しましょう。ハザードマップでは、洪水や土砂、高潮、津波などの災害で想定されているリスクが見られます。
国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
ハザードマップを使うことで、購入を検討している土地がどういった災害リスクを抱えているのかがわかります。日本は台風や地震などが多い国のため、まったく災害リスクのない土地を見つけるのは難しいですが、災害リスクの高い土地は避けられます。
よさそうな土地を見つけたら、必ずハザードマップで災害リスクを確認しましょう。
建ぺい率と容積率を確認する
建てたい家のイメージがすでにあるのであれば、土地の建ぺい率と容積率を必ずチェックしましょう。
建ぺい率は土地の広さに対して、どれだけの広さの家を建てられるのかを示します。建ぺい率が50%の土地であれば、土地の面積の半分の広さの家を建てられます。
容積率は土地の広さに対して、どれだけ床面積のある家を建てられるのかを示します。容積率が100%の土地であれば、土地の面積と同じ床面積の家が建てられます。
建ぺい率50%、容積率100%の土地の場合、100m2であれば1階が50m2、2階が50m2の家が建てられるわけです。
土地の建ぺい率と容積率によっては、建てたい家を建てられないことがあります。土地を探しているときは、建ぺい率と容積率にも注目しましょう。
土地の境界がはっきりしているか
土地の境界を示す目印として、境界標というものがあります。境界標があれば、どこからどこまでが誰の土地なのかをはっきり判断できます。ところが境界標が設置されていない土地があるため注意が必要です。
境界標がなければ、隣接する土地と土地の境界を確定させるために測量が必要です。隣に住む人が協力的な人とは限らないため、主張が強くて思ったような境界にできないおそれがあります。このように境界の確定していない土地は、隣人トラブルを起こすリスクを抱えているといえます。よほど魅力的な土地でなければ、避けたほうがよいでしょう。
土地選びの失敗は取り返しがつかない!
失敗すると取り返しがつかない、という意味でも土地選びはとても重要です。土地のプラス面にばかり注目してしまい、マイナス面に意識が行かず、実際に住んでから後悔することもあります。土地選びで失敗すると、どういったことが起こるのかを紹介します。
大雨の洪水で床上浸水に!
近くに川のある土地は注意が必要です。ふだんは水の少ない小さな川が大雨になると一変して、大量の水があふれ出して洪水になることがあります。洪水になると家へ水が流れ込み、床上浸水を起こします。床や柱が水に濡れて腐るなど、深刻なダメージを家におよぼします。
学校が遠くて子どもの通学が大変!
駅などの主要な施設から遠い家は、不便なものの価格が安いため、同じ予算で広い土地を購入できます。広い家でのびのびと育てられるため、子どもの情操教育にもよさそうです。しかし家から学校が遠いと通学時間が長くなり、登下校が大変になってしまいます。
丘の上は坂道がつらい!
丘の上にある土地は日当たりがよいうえに見晴らしにも優れ、心地よい暮らしができそうです。しかし丘の上にあるということは、坂道があるということです。日常的に坂道を登る、つらい生活がはじまります。家は一生に一度の買い物といわれていますから、一生坂道を登り続ける人生になるかもしれません。
幹線道路沿いは騒音がひどい!
移動手段として日常的に自動車を使っている人であれば、幹線道路沿いの土地は自動車での移動がしやすいため魅力的に見えるかもしれません。しかし便利な幹線道路は、自動車だけでなくトラックも日常的に通るため、かなりの騒音が発生します。特に主要幹線道路沿いの場合、深夜でも交通量が落ちず、落ち着いてくつろげないかもしれません。
近くのコンビニに学生が集まって騒ぎ出す!
家からすぐ近くにコンビニがあると、思い立ったらいつでも買い物ができるのでとても便利です。しかしコンビニには人がひんぱんに集まるため、騒々しくなりやすいです。学校や塾帰りの学生、夏休み中の学生、暇つぶしに来た学生…とにかく学生が昼も夜も関係なく集まるところもあります。家の近くにコンビニがあると便利ですが、平穏には暮らせないかもしれません。
要注意!よさそうな土地の意外な落とし穴
注意に注意を重ねて、ついに見つけたよさそうな土地ですが、すぐに契約するのは待ってください!土地のプラス面だけしか見えていないのかもしれません。一般的によいとされている土地でも、意外な落とし穴が潜んでいることがあります。
分譲住宅地は隣人がわからない
新しい住宅地として分譲している土地は、新築住宅が建ち並ぶ整ったきれいな街並み、整備されたインフラ、古くからのコミュニティがないなど、多くのメリットがあります。
しかし新しく分譲されたということは、隣近所にどんな人が住むのかわからないということでもあります。
- 週末ごとに庭でバーベキューをする人
- 大音量で音楽を流す人
- 取引先企業に勤めている人
- すぐにクレームを入れてくる人 など
このように、自分にとって都合の悪い人が住むおそれがあります。おそらく何の問題もないふつうの人が住むはずですが、実際に生活してみるまではわかりません。
駅近はゴミを捨てられることも
駅近は価値の下がりにくい土地として人気があります。通勤や通学がしやすいだけでなく、駅前にある飲食店や施設なども利用しやすいなど利便性に優れています。
しかし、駅周辺には多くの人が集まるため、マナーの悪い人も少なくありません。マナーの悪い人たちは、飲み終えたカップや空き缶、ゴミなどを家の周りに捨てていきます。なかにはポストのなかへゴミを押し込む人もいます。酔っ払いが家の前で嘔吐することだってあります。
駅近だからといって、すべての土地がよいとは限りません。土地を購入する前に駅周辺をよく調べて、利用者の傾向を把握しておきましょう。
閑静な住宅地は近所付き合いが大変
閑静な住宅街は人の集まる店舗や施設が少ないため、静かで暮らしやすい地域です。落ち着いて暮らしたい人にはおすすめです。ただし、静かな環境は住人たちが静かに暮らすことで維持されていることを忘れてはいけません。
子どもがまだ小さくて、家の外に声が聞こえるほど騒いでしまうと、冷たい目で見られてしまうおそれがあります。近所の人たちと良好な関係を保つには、こまめな近所付き合いが欠かせません。騒いでしまう子どもを「元気な子」と思ってもらえるか、「うるさい子ども」と思われてしまうのかは、近所付き合いの努力にかかっています。
公園には犯罪のリスクがあるので注意
家の近くに大きな公園があると子どもの遊び場所になるので、子育てをしている人には大きなメリットになります。近くに公園のある土地がほしいと考えてる人もいるでしょう。しかし公園は犯罪のリスクがあるので注意が必要です。
小規模な児童公園はともかく、大きな公園は遠くからも人が集まってくるため、見知らぬ人がいて当たり前です。つまり不審者がいても気づきにくいのです。しかも樹木が生えているため、見通しの悪い場所がいくつもあります。公園は安全な場所とは限りません。公園には犯罪のリスクがあることに注意しましょう。
土地の制限に注意する
不動産会社から販売されている土地は、建築制限が設けられていて、理想の家を建てられないことがあります。そのため、土地を購入するときは、土地にどのような制限がかけられているのか注意する必要があります。
土地の制限にはどういったものがあるのか、見ていきましょう。
建てられる建物が土地で制限される
土地を購入するときは、その土地にどのような制限があるのかを調べておく必要があります。建物を建てる場合、「建築基準法」や「都市計画法」などの法律によって、その土地自体に多くの制限がかかっています。この制限によってその土地に何が建てられるのか、どのような形で建てられるのかを大まかに決定します。
都市計画法では、土地が属する用途地域によって、住宅、商業施設、工場など、何が建てられるのかが制限されます。また、建ぺい率や容積率が定められており、これが土地の面積に対する建物の面積や容積を規制します。
建築基準法も同様に、その土地で許される建物の基準を定めています。たとえば、耐火性能や、隣地との距離などがこれに該当します。
これらの法律によって、土地に建てられる建物は大きく制限されるわけです。土地を購入する前や建物を建てる前に、法律による制約をしっかり理解しておきましょう。
建ぺい率と容積率に注意が必要
建ぺい率は、その土地に建築できる建物の建築面積の上限を示しています。たとえ広い土地でも、建ぺい率を超える建築面積の建物は建てられません。
容積率は、その土地に建築できる建物の延床面積の上限を示しています。3階建て住宅の場合、容積率の制限によって希望する家を建てられないおそれがあります。そのため、容積率ができるだけ緩和されている土地を選ぶのがポイントです。
土地には接道義務がある
建築基準法では、土地が道路に2m以上接しており、さらにその道路が4m以上の幅員がなければ家を建てられません。これを接道義務といいます。接道義務は火災などの災害時に緊急車両が通行できる道路や、避難路を確保するために定められています。
ただし、条件を満たしていない場合でも、接道義務の例外として認められる場合もあります。この接道義務の例外を「43条ただし書許可」といいます。
たとえば、道路幅員が4m以上ない場合、4m以上になるように土地の接道部分を後退(セットバック)させる方法です。土地の一部が道路になるため、それだけ敷地が狭くなりますが接道の幅員を確保できます。
防火地域の建築制限に注意する
防火地域とは都市計画法で定められた、火災の被害を広げないために建築制限を課せられている地域のことです。防火地域は、次のような場所に指定されています。
- 建物が密集している地域
- 幹線道路沿い
基本的に防火地域内だと、木造建築物を建てることができません。また、防火地域では建物を耐火建築物または準耐火建築物にする必要があります。
- 耐火建築物
- 主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段など)が耐火性能を持っているほか、火災が発生しても消火されるまで倒壊しない、ほかの建物へ延焼しないなどの条件を満たした建物
- 準耐火建築物
- 主要構造部が準耐火性能を持っているほか、外壁の開口部(窓、トビラなど)に火災をさえぎる設備がある建物
また、防火地域の周辺では、建築制限が少し緩められた準防火地域が設定されています。これらの地域でも、建物の高さや広さによって建築できる建物が決められています。
第一種低層住居専用地域
土地によって、建築できる建物の大きさや高さ、用途などの制限があります。こういった制限を設けることで、人々が暮らしやすい地域を守れるのです。土地に制限を設けてエリア分けしたものを「用途地域」といいます。
用途地域は13種類に分けられますが、なかでも「第一種低層住居専用地域」はもっとも厳しい制限があります。建物を建てるうえで重要なのは、次の建ぺい率、容積率、絶対高さ制限です。
- 建ぺい率:30%、40%、50%、60%
- 容積率:50%、60%、80%、100%、150%、200%
- 絶対高さ制限:10m、12m
また、建てられる建物も制限されています。
第一種低層住居専用地域内で建てられる建物の用途も制限されています。建てられる代表的な建物は次のとおりです。
- 戸建て、マンション
- 小規模店舗または事務所の兼用住宅
- 幼稚園、小学校、中学校、高等学校
- 図書館、神社、寺院、教会
- 老人ホーム・身体障害者福祉ホームなど
大型スーパーやドラッグストアなどは、第一種低層住居専用地域だと建てられません。そのため、場所によっては日用品などを買うために、遠出が必要になることもあります。その代わり、そういった規制があるため、閑静な住宅街を維持できるというメリットがあるのです。